本当の勝者
カードはあと2枚。現時点では僕の1勝1敗1引き分け。カードは5枚だから、次で勝てば2勝1敗1引き分けになるんだけど、お互いの手札の内訳はこう。
僕 3とクイーン
彼女 キングとクイーン
なので、ここからの流れは
僕 クイーン
彼女 クイーン
で、引き分けになったとしたら、1勝1敗2引き分けになって、
最後は、
僕 3
彼女 キング
となり、1勝2敗2引き分けで僕の負け
これが、
僕 クイーン
彼女 キング
僕 3
彼女 クイーン
だと、2勝2敗1引き分けで決着がつかなくなる。
いずれにせよ、僕の勝ちはなくなってしまった。
負けるか引き分けしかない。
これはもう、潔く負けを認めるべきだろうな、と思い、彼女に白旗をあげることにした。
「僕の負けだよ。どう考えても、勝ちの目はもうないし」
そう言って、彼女の反応をうかがった。
彼女にしてみたら、どこかうつろな眼差しをしていて、勝負に負けた人みたいになっていた。なぜ?
「いえ。勝ち負けで言えば私の負けです。本当は、先輩に勝ってもらって、私がモデルになるのをあきらめて、先輩と結婚する、という展開が私がイメージしていたことでした。だから、最初の3枚、全部数字のカードにして、123と321で、1勝1敗1分けになって、最後に絵札同士になって、キングとクイーンは夫婦だから、争うことはできないとかなんとか言って、引き分けで終わるつもりだったんです。
それなのに、先輩が負けを認めたら、もう私の計画は破綻してしまいます。だから…私の負けです」
そうか…たしかに彼女の強引な話の持って行き方からすると、引き分けだったら、結婚もモデルも結論は先送りにして、とりあえず明日デートすること考える! とか言いそうだ。
僕はこの結果が良かったのか悪かったのかよくわからない。ただひとつ言えることは、こうやって彼女に振り回されることが意外と楽しい、ということだ。
この気持ちを素直に伝えよう。
「僕……」
そう言いかけたとき、目の前がまぶしく光って、何も見えなくなって、それと同時にキーーン! というものすごい耳障りが音が大音量で鳴り、前は見えない、耳は聞こえない、という状況に。
一体何が!? と思ったが、前は見えない、音は聞こえないで、気がつくと、僕は最初に彼女が僕に告白してきた、伝説の樹の下に立っていた…。
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