二人の相性を知りたいから、占ってもらった

 彼女が僕との相性を知りたいというので、占い師に会いに行くことに。

「あー、ここー。なんか知らないけどオススメだって、春香が言ってたよ」

 春香が誰なのかわからない。彼女は自分のことをよく話すが、だいたい会話にならないので、今度もそうだろうなと思いつつ聞いてみた。

「春香って? クラスメイト?」

「んー。よくわかんない。Twitterで私のことフォローしてて、その人がこの占い師さんいいよ、ってツイートしてたから、きっとそうなんだろうなって」

「ん? それって知らない人?」

 彼女がフォローしているのではなく、春香という人にフォローされているのだから……それは彼女に対してオススメしていたのではなく、春香さんが自分で感じたことをツイートしていて、それを彼女が読んで、自分に対してオススメしていると思い込んでいるのでは?

 そう思いながらも、彼女の思考回路は謎が多いから、それ以上は深く考えないことにした。

 噂の占い師のところにいくと、レストランの入り口にあるようなメニューボードみたいな看板に名前と料金が書いてあった。

「天使ケイ? てんし?」

 なんかすごい名前の人だな。料金は…10分1000円か。高校生にはちょっと厳しいな。

 そんなことを思っていると、彼女はそそくさと占い師のほうに行って、なにか話しかけていた。

「名前、てんしけい、じゃなくて、あまつかけいだって。あと、相性はすごくいいらしいよ」

 いつの間に…。というか、やっぱり名前の読み気になっていたんだ。それにしても、ずいぶんあっさりとした占いだな。学生だから手を抜いたとかじゃないよな…。

 そんなことを思っていると、占い師の女性が僕のところにやってきて、

「大丈夫。手を抜いたわけじゃなくて、もう見た瞬間、この二人は心配ない、と思ったから、わざわざ占いをしてお金払うのはもったいないなーってさ」

 大事にしなさいよ、と占い師の女性は言って戻っていった。

 彼女はそれを聞いて興奮したのか、僕の腕をつかんでぴょんぴょんと飛び跳ねた。

「どーしよ、先輩。ここまで相性いいなら結婚するしかないね? 結婚する? 子供何人欲しい? 浮気したら殺すよ?」

 なんでそうなるんだ? 気が早すぎるというか、一人で盛り上がりすぎ。僕はやれやれという気持ちをこめで、大げさにため息をついた。

 すると彼女は突然泣き出した。うっかり自分が何か気に障るようなことしたのだろうか?

「今すっごい嫌そうな顔した。先輩、本当は私のこと好きじゃないんだ。あー、わかった。先輩、あの占い師さんのこと好きで、それで私と別れたくて連れてきたんだ。うんうん、あの占い師さん美人だもんね。どーせ私はデカいしか取り柄のない女ですよ」

 なんでそうなるんだ? とツッコもうとしたら、占い師の女性が先にツッコんでくれた。

「何言ってるのよ! あなたたち絶対別れないから心配ないって! このケイさんが言うんだから間違いないよ!」

 それを聞いて安心したのか、彼女はすっかりご機嫌になった。

「先輩、これからもよろしくお願いします!」

「うん…そうだね。よろしく」

 この情緒不安定ぶりが気になるものの、こういうやりとりも楽しいと思えるんだから、本当に相性はいいのだろう。

 そう思っていると、彼女のスマホに着信があり、彼女は画面を見ると青ざめて、すぐにポケットにしまった。

「どうしたの? 大丈夫?」

 何か直感的に嫌な予感がした。

 彼女はだまって占い師の女性のほうにいくと、

「お願いします。助けてください」

 と、真剣な表情で言った。

 一体彼女に何が? この時はまだ僕は事の重大さを理解していなかった…。

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