第2章 ファースト・レギオン 〔共闘死戦線〕
感想?
──わざわざ言うことでもあるまい。
俺たち3人での初めてのクエストは、比較的下位に位置する凶竜の討伐だった。俺の実力とパーティとしての結束力の小手調べ、といったところだろうか。
「はっ!」
グレアが高速で剣を振り下ろす。
「やっ!」
ナミリが高速で飛びかかる。
今は、討伐対象となる凶竜の子分狩りだ。こうしておけば将来凶竜が増える恐れが減るし、親──つまり対象が現れるため、一石二鳥である。
俺はここで、2人に聞いておくべきことを聞いておいた。
「ところで、俺たちがこれから討伐する凶竜って───どんなやつだ?」
がっくし。
そんな擬音が、二人の方から聞こえるようだった。
「い、いや、だって俺、内容聞いてないし」
そう言うと、二人はそれもそうかといった顔つきになって答えた。
「今回は・・・まあ最初だし、比較的連鎖率の低いやつにしてある。名前は・・・忘れた」
───連鎖、という言葉がある。
もともと、凶竜は強い密接な関係を持っており、そのうちのどれかでも欠けたらおそらく凶竜は絶滅するだろう。
例えば、Aという凶竜がいるとすると、Aのエサとなる凶竜がBで、BのエサがC、CのエサがA、みたいな。
実際はもっと複雑なのだが、簡単に言えばそういうことだ。凶竜は自由奔放な生き物だが、とても強い依存関係にある。
そして、エサがなくなれば自分たちも絶滅することは凶竜自身理解している。そのため、エサとなる凶竜が殺されると、絶滅を防ぐため、またエサの減少を防ぐために、種類が違う凶竜が襲ってくることもある。さっきの例で例えるなら、BをAの目の前で殺すとAはBを殺した人を襲う、という感じだ。
だがエサとなる凶竜の死は、当然ながらいつどこで起こるのかは分からない。そのため、凶竜が察知できない時もある。
連鎖率というのは、その連鎖の起こりやすさのことだ────
解説終、と。
俺は凶竜系のクエストしかやってこなかったから、結構凶竜について詳しいと自負している。だから今ナミリが言った言葉の意味は、すぐに汲み取れた。
───つまりは、安全なクエストで、俺を試そう、と───
俺は、再び敵と向き合った。
見た所、二人の実力は俺より少し下、というところか。それもそのはず、たとえ標的が同じだとしても二人はパーティで、俺は一人でクエストをこなしてきたのだから。
かといって、二人の実力が拙いものかといえばそうでもない。確かに驚く程強いわけではないが、それでも充分強いほうではある。
「おおっと、リーダー様のお出ましだな────」
グレアが呟いた。
第一印象として、とにかくでかい。
おそらく10メートルはくだらないであろうその巨体は、しかしながらも素早く動く。
翼も大きく、一回羽ばたけばはるか遠くへも行けそうなほどだった。
そんな凶竜がとった、第一の行動。それは、突進だった。
俺は剣を構える。
その瞬間には、もう凶竜は眼前に迫っていた。
「うおっと」
俺は、すんでのところで突進を回避する。
「ひゃぁーでかい」
特にその言葉に意味があるわけではないが、知らず知らずのうちに口からそんな言葉が飛び出していた。
「さあ、いくわよ」
ナミリに合わせて、三人同時に凶竜に向かって走り出す。荒野になっていて障害物がないおかげで、とても走りやすい。
「はっ!」
グレアがまず短刀で一閃。二閃、三閃、四閃───
「続くわよ、アルト君」
俺もその言葉に従い、凶竜の首筋に斬り込んでいく。
「ギアアァッ!?」
凶竜が思わず、悲鳴を上げる。その隙に俺たちはどんどん追撃を加える。
武器の種類は、グレアが短刀二本。小回りと攻撃回数に秀でている。方やナミリは似合わず大剣で、破壊的な攻撃力が売りだ。
俺は柔軟性と立ち回りやすさに優れた、刀に近い剣を使用している。一人でクエストをこなすには、特に柔軟性が求められる。
だが今はパーティ戦。各々が役割を遂行して、同等にクエスト達成に貢献することが求められている。そのため、俺が取るべき行動は───
「そおらっ」
俺は左斜め前に飛び、凶竜の翼に切り込みを入れた。
「グアアァッ!?」
凶竜は起こった出来事に気がつき、慌てて翼をはためかせる。だがもう遅い、虚しくバサバサと音が響き、傷口から血が飛び出すのみ。
「なるほど、飛ばれたら厄介だからな・・・。まさかこいつ、その判断と行動を一瞬で!?」
グレアはアルトの機転に思わず舌を巻いた。
だがやられっぱなしの凶竜ではない。2メートルはあるであろう尻尾を振り回し、三人めがけて叩きつけてきた。
「うおっと」
俺はサイドステップで避ける。瞬間的に動けるステップもまた、重宝される。
二人はそれを知らないのか焦ったのか、後ろに距離をとり回避する。俺の『かわす』とは違い、『よける』といった感じだろうか。
「ゴアアアッ」
至近距離で挑発し続ける俺にしびれを切らしたのか、凶竜は俺を標的に爪で襲いかかってきた。
「よっ」
それを俺は剣で受け止める。思いのほか、剣と爪の衝突音はキィンという綺麗な澄んだ音だった。
それが、約30回ほど。
二人が、その大チャンスを見逃すのか?
────否。
二人は怯まず猛攻し、凶竜はやがて苦しみもがきながら倒れた。
「グワアァァ・・・」
俺は、その場にふぅーと息をつく。
まずは、第一関門突破、と。
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