第7話シンソウの人々(怪物と王女とゲイ)
「私は先生の彼女のためにオムライスを作るわ」
「私は先生のためにサラダを作るわ」
「私は先生の彼女のために取れたても野菜ジュースを作るわ」
「私は先生のためにあまーーーーいあまーーーーいデザートを作るわ」
ピーターは先生の彼女のために朝から晩まで作っていた。涙を流しながら。
「先生、先生、先生、先生、私の先生。私だけの先生。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでこんなことになるの?私はただ先生と一緒にいたいだけなのに」彼女は包丁を握りしめて自分のクビに刃物を突き付けた。
「こんなみじめなことこれ以上私にはできない!」そう言ってピーターは死ぬ決意をした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ痛い・・・・痛いわ」包丁はピーターの首の皮が一枚はがれたところで止まった。血が少し垂れてきた。
「は、は、は!こんなに痛いのね、死ぬって。嫌だわ。死ぬのはほんとに嫌。私はやっぱりこんな世界でこんな終わり方なんていや!」そう言ってピーターは病院からもらってきた抗うつ剤と睡眠薬を飲んで少しソファに横になった。
「ふううーーーーーーーーーーーーーーーーーー、どうすればいいのかしら」そう言ってピーターはソファで寝ることにした。ピーターはここ最近完全に時間の感覚がくるっていた。先生に彼女ができてからピーターは部屋から出てこなかった。
カウンセリングも病院も行かずに引きこもっていた。そのために勤めていた学校からはまた休職届を書いてくれと言われてきた。
「そうよね、もともと私なんて教壇に立つ資格なんてないわね」ピーターはもともと中学校の教師だった。だが近年の生徒と保護者のモンスターペアレント、そして少子高齢化による人件費削減。そのために非正規の教師が増え、正規の職員であるピーターは1か月の残業時間は110時間を簡単に超えていた。
給料もボーナスも上がらず、理想と現実、そして生徒がお客様に代わってしまったシンソウの国の教育は教師を殺しにかかっていた。
結果的にピーターはうつ病になった。最初のころは何とか抗うつ剤と睡眠薬で半年間の休職で復帰できた。だが、今回のロイド先生のことでまたピーターはおかしくなってしまったのである。
『先生、先生。俺は先生のことが前から好きでした』
『・・・・・・・・シンジくんごめんなさい』
『それは俺と先生が男性同士だからですか?それとも先生と生徒の関係だからですか?』
『どちらです。私はそんな人間じゃないし、男性にも興味はないよ』
『はっ!そんな、じゃあ俺の気持ちはどうしたらいいんだよ』
『忘れなさい。そして普通になりなさい。もう来週卒業でしょ。高校になったらそんな性癖じゃうまく適合できないわよ。これからは普通に女性を好きになりなさい』
「その後卒業式の前日にピーターの教え子は自殺したんだね」
「はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はいそうです。私はそれから学校にも普通に仕事をしてました。だからうつ病になったのはそんな理由じゃないんです」ピーターはロイド先生にすべて話していた。ロイド先生の恋人の料理からいっこうにピーターがカウンセリングに来なくなったのでロイドはピーターの家に直接行くことにしたのである。
そして、ピーターは昔のことを洗いざらいはなし、自分の性癖がくるってしまったこと、そしてロイド先生のことが好きになってしまったことを話していた。
「ほんと馬鹿よね。私はあの子にただただ普通に生きていてほしかっただけなのに。男性が男性を愛するなんてよくないのに・・・・・それなのに私もいつの間にか男性の事を好きになってしまうなんて」ピーターとロイドはソファに一緒にソファに座りながら話していた。その様子はどこか恋人のような感じだった。
「そう、ほんとにきつかったんだね」
「私は昔から両親からまじめにまじめに生きなさいと言われてきました。だからこそ頑張って大学を卒業して教師になって正規の職員で働いてました。頑張りました。両親の期待に応えました。社会人らしく働こうと思いました。なのに何で私のせいで生徒が自殺なんて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くそみたいな人生になってしまったわ」
「ピーター」そう言ってロイドはピーターを抱きしめた。
「先生、私、私、ほんとに馬鹿よね!」ピーターは先生に泣きついた。
その夜、ピーターとロイドは同じベットで寝ていた。
「ふう」ロイドは起きて、1本煙草を吸っていた。
『ああーーーーーっ、先生!先生いいわ先生のペニスが私の肛門にはいってるーーーーーー!』
ロイドは煙草を消して服を着た後、外に出た。近くを散歩しながらロイドは夜風に当たっていた。満月がロイドの影を映していた。風がなく、外にはちらほら散歩をしている人たちがいる。イヤフォンをしている若者。ランニングをしている女性。子供と一緒に月を見に来た家族。だが、この時間帯に外に出てくるシンソウの人たちは大体が精神病にかかっている人間だった。
変な国だ。この国はほんとに精神病だらけだった。私を含めて昔から変にメンヘラであったりリストカットばかりする人間もいるし、サイコパスな人間もいる。こんな国がこれからも持つわけがない。そうロイドは考えながら散歩をしていた。
「ダンテ、今日は何をしているんですか?」
「お絵かき!」そう言ってシンソウの国王であるダンテは自分の部屋で絵を描いていた。シンソウの国王であるダンテは父の代を受け継いで国王になったが、その多忙な労働と精神的な重圧によりとうとう精神が幼児化してしまったのである。
「ダンテ、もう寝なさい」妻であるシャーロットはダンテが精神がおかしくなる前に結婚していた。ダンテは精神がおかしくなる前はそれはもう、国民全員から好かれ、容姿端麗、頭脳明晰であまたの女性からも行為を寄せられていた。シャーロットも行為を寄せていた一人であった。
シャーロットがダンテと結婚できた時はそれはもう人生の勝ちを見た時だった。安泰だと思った。だが、現実はひどかった。まさかこのようなことになるとは。
それから、シャーロットはダンテに代わってシンソウ、いや4つの王国で初めての女王が誕生したのである。しかし、女王の仕事はあまりにも忙しかった。側近の大臣も精神を病み、王国の9割が精神病を患っていた。そのために法律を決めるのも案件を決めるのもすべてシャーロットが独断で決めていた。
「疲れる、なんで私がこんなに疲れることをしないといけないの」寝室でシャーロットは髪をとかしながら鏡の前で自分と向き合っていた。ベットにはぐっすりとダンテが眠っていた。
「ほんとに、あなたさえこんなことにならなかったら・・・・私は有意義に暮らせたのに」自分の姿をもう一度見ていた。そこには年齢とはそぐわないほど年を取っていた自分がいた。
シャーロットはダンテの横でいつものように寝た。彼女は多忙でも精神的にきつくてもそれでも彼女は精神がやられなかった。この国では珍しいタフな人間だった。そのため、彼女が独断で決めていた政策もこの国には利益が出ていた。結果的にシャーロットが王女のほうがこの国は現在うまく回っていたのである。
「じゃあ行ってくるわ。今日からまた学校の先生として頑張るわね」
「行ってらっしゃい」ロイドはピーターを送り、それから自分の仕事場に行くことにした。ロイドはピーターが壊れていることに気づいていた。そもそももう彼女は先生を退職していたのである。そして、彼女の台所の引き出しにはシャーロット王女の首が置かれていた。
そう、ロイドの恋人とはシャーロット王女のことである。無論、王女とただの平民が恋人同士になれるわけがない。ロイドが嘘を言ったのである。しかし、ピーターはそれを信じ、シャーロット王女に殺意を覚え、殺してしまったのである。
ピーターが家から出た後、すぐにピーターは警察に逮捕された。もう、ロイドにとってピーターというおもちゃはいらなかったのである。
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