エピローグ

ロペス博士 最後の記録

 私は今、かつては多くの研究者たちで賑わったパークの研究施設の一つに再び戻ってきました。といっても、いまやここは資料の保管庫となっています。そして私は多くの資料と記録の最後に付け加える章を書いています。書き終えたら、また乗ってきた調査船に戻ります。私だって研究者の端くれなのですからその勤めを最後まで続けるつもり。


 結局、現時点までのところで、サンドスターが何であるのかはよく分からないままです。ただ、セルリアンへの対策が見つかったのは幸いだったかもしれません。記録にもあるようにジャパリパークやフレンズ達をめぐっては余りにも多くのことがありました。


 ただ、そんなことよりも私たちは肝心なことを見落としていました。これは我々自身にかかわる問題で、免疫学的なものでした。きっとこの島に居続ければそんなこと考えなくてもいいのでしょうけど。我々は最初から気をつけるべきだったのです。普通の野生動物との接触ですら感染症にかかる危険は付きまとうものですから。フレンズ達の検疫は行われていたはずですが、もしかするとパーク以外の場所での接触が原因なのかもしれません。


 フレンズとヒトが出会った時から、こうなることは決まっていたのかも……。いまや世界中に多様な新型ウイルスによる感染症が蔓延し、世界中の都市は機能を失い、新種の人獣共通感染症で野生動物にも多くの影響が出ています。想像を絶する史上最悪のパンデミック……特に深刻なのがヒト免疫不全ウイルスの特徴を持ち合わせた致死率の高いインフルエンザです。次々とウイルスが変異するために、到底ワクチンの製造は追いつきそうにないそうです。もっとも我々は立ち向かうことを諦めるつもりはありませんが。


 フレンズ達が今だ元気な姿を見せていることから思うに、彼女たちにはもともと耐性があるのか、もしかするとサンドスターの何かが作用しているのかもしれません。もしくはウイルスの方がサンドスターの影響を受けたのかも分かりません。いずれにしてもフレンズ達に罪があるわけではありませんけど……。


 もし再びヒトがジャパリパークを再開し、この記録を見つけた時はおそらく事情を知っているでしょうからこの項目のことは思い出話になるでしょう。でも、そうでなかったら、いつかはフレンズ達によって語り継がれることになるでしょう。

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