第25話 漸進を阻むもの

 空挺部隊の行く手を阻まれつつあった。小個体のセルイリアンが飛んできた。ライフルの銃口からは僅かな火が放たれ、薬莢が闇夜に舞った。

「クソっ! 囲まれてますよ」

「イシを狙え、イシを!」

 隊員の一人が拳銃をホルスターから抜くと足元に近づいたセルリアンを撃ち抜いた。暗視スコープ越しに見た周囲の雑木林はセルリアンと思しき熱源だらけだった。

「隊長、三時の方向なら突破できそうです」

 一人が叫ぶように言った。

「了解。また空港から遠ざかるのか」

 ミネキ隊長はぼやいた。

「仕方ない。行くぞ」

 隊長は先頭になって進んだ。



 ヒダカ教授達はライトも点けず、ジープを走らせていた。もちろんミヤタケ研究員がハンドルを握っていた。

「もうじき、でかいセルリアンがいるはずだ」

 エーレンベルクが言った。

「おーい! すぐ近くにいるのを見つけたぞ」

 上空にハヤブサが飛んできて教授達に声を掛けた。

「ありがとう!」

 教授は手を振って答えた。

「それじゃ、諸君、いよいよだ」

 教授はそう言って投光器のスイッチを入れた。



 教授達や空挺部隊が奮戦している時、空港には空母ヤマシオから垂直離着陸輸送機ウオタカの一機が到着した。

 だが、空港上空に現れたウオタカはどこか様子がおかしかった。周りが不安げに見守る中、バランスを少し崩した状態でフラフラと滑走路の外へ降りたった。なんとか無事に着陸したものの着陸装置と機体一部が損傷、プロペラとエンジンも一部に不具合が発生とい状況だった。またしても離陸はできないという状態だった。

「いったい、全体、今日は機体トラブルが多いね。合衆国の爆撃機もトラブルが起きてくれるといいけど」

 後片付けの手伝いを終えて、少尉は冗談じみた口調で言っていたが表情は硬かった。

「やはり、サンドスターが……」

 近くで様子を見ていたロペス博士は呟いた。

「なんだって?」

「いえ、独り言よ」

 それから少尉は向きを変え、「ミライさん、でしたっけ? もう一つプランがあるんだが……」と、少し言いにくそうに言った。

「ここまで来ると、どんなアイデアでも参考にしますわ」

「鳥のフレンズに運んでもらうのはどうかと」

 ミライ氏は少し険しい表情になった。

「ええ、それも手かもしれません。でも、なによりシシンが到着しないことには……」

 ミライ氏は遠くに視線をやりながら言った。

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