第24話 即応

 ニッポニア共和国軍の空挺部隊の隊員たちは夕闇の中で ‘シシン' と共に無事地上に降り立った。

「こちらチームアルファ、無事降下。各自状況を報告」

 部下の一人と合流したミネキ隊長は無線で呼びかけた。

「こちらチームガンマ、無事降下。シシンのコンテナも回収しました!」

「こちらチームベータ、降下済み」

「チームデルタ、降下済みです」

「よろしい。各自空港へ向いながら合流」

 隊長は部下一名と暗視スコープをチェックし、ライフルを構えると進み始めた。

「セルリアンとの遭遇の可能性あり。ライトの使用厳禁!、各自暗視スコープを使用せよ」

 隊長は続けて無線で呼びかけた。

「了解。万が一遭遇の場合は?」

「出来る限りやり過ごせ。判断は各自に任せる」

「了解」

 そして各自は進むうちに合流した。

「シシンの状態はどうだ?」

「外観は問題ありません」

「よし、先を急ごう。空港の位置はまだ先だ」



 ジャパリ島の空港では急な事態に追われながらも、すぐに出来ることに着手し始めた。

「とにかく教授達は巨大セルリアンの対応を優先してください」

 ミライ氏は各自に指示を出した。

「わかった」

 教授達はジープに乗りこんで、最後に巨大セルリアンを確認した地点に向かうことにした。

「それから、シシンを朝までに山に運ぶ手段のアイデアを練りましょう」

 ミライ氏はイマニシ博士やロペス博士と建物の方に向かおうとしたその時、

「アイデアならあるぞ!」

と声が聞こえた。

 声の方に視線を向けると、電話で声を聞いたイワモト少尉とその同僚の姿があった。

「いたってシンプルなアイデアだ。空母にいる輸送機 ‘ウオタカ' を使えばいい」

 少尉はきっぱりと言った。



 一方でジャパリ島から離れた洋上、空母ジュピターのCDCの中も活気あるものだった。

「中佐!爆撃機は早朝に到着の見込みです。作戦の進行状況は予定通りです」

「よろしい。それとコンクリートの散布部隊は?」

「そちらは最寄りの各空軍基地から離陸の予定です。ただ、天候不順と機体トラブルが多数あり当初の予定より遅れが予想されます」

「分かった。作戦に影響は?」

「今のところありません」

「逐一報告をしてくれ」

「了解!」

 他の兵士からの報告も続いた。

「ジャパリ島上空の共和国軍大型輸送機一機ですが、レーダーから消えました」

「空港に降りたのか?」

「分かりません。現在衛星画像の処理待ちです」

「分ったらすぐ知らせてくれ。それから空母のヘリの方はどうだ?」

「島から避難する人を空母に収容していたようです」

 その時、小型タブレットを抱えた部下が急ぎ足でやってきた。

「中佐、これをご覧ください」

「なんだね」

 タブレットの画面に映っていたのはニッポニア共和国海軍空母甲板と思しき場所からのリポート映像だった。

「なるほど、ニッポニアもなかなか洒落たことをするな。ライブ映像か?」

 中佐は意外にも淡々とした面持ちだった。

「そのようです」

「なるほど、少なくとも共和国に手を出すと世界中の市民から非難が飛んでくる可能性があるわけだ」

「ですが、下手をすると作戦に影響が出かねません……」

「問題は無い。こうなったら共和国軍は相手にするな。我々は粛々と作戦を進めるだけだ」

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