第14話 合衆国の対策

 合衆国軍のルイス中佐は大統領官邸にある会議室に招かれていた。中東での作戦指揮を終えて合衆国に戻り、これから長期休暇を満喫しようとしていた矢先だった。他には軍参謀の姿も見られた。

「閣下、これは何事でしょうか?」

「急なことで申し訳ない。君にはある作戦の指揮をとってもらいたいと考えているのだ」

 大統領は重々しい口調で言った。

「どんな作戦でしょう?」

「それより君、ジャパリパークは知っているかね?」

 大統領から突然の一言に思わず顔をしかめた

「ええ、例のサンドスターが話題となっている、ニッポニア共和国の島ですね」

「ああそうだ」

 それから大統領は少し芝居じみた様子で続けた。

「どうも厄介なものだ。我が国の研究機関の報告によるとサンドスターはの拡散範囲は拡大しているとのことだ。動物のフレンズ化現象は世界に広がろうとしている。それとセルリアン! この正体不明の生き物が派遣した研究者達を襲撃したのだ。もしも、このような事態が我が国の中で起きたらどう思うかね中佐?」

「それは、とても厄介なことになるかと思いますが」

「そうだとも。対策が必要なのだ」

「ですが、それでどうして私が呼ばれたのです? 科学者や技術者の方が適任ではないでしょうか。それにジャパリ島は共和国の領土でしょう」

「だが、当事者であるニッポニア共和国のリアクションはどうも今一つなのだ。今、国連を通じて懸念表明の準備をしている。もちろんそれで、共和国が早急に対処をしてくれれば事は丸く収まるといものだ。だが、そうならなかったら……」

 中佐は大統領の言わんとすることに薄々気が付いた。

「我が合衆国が、何かしらの手を打とうということですか?」

「まあまあ、それはあくまで最悪のときの話だ。だが備えあれば憂いなしと言うものだ。それにユーラシア連邦も介入が噂されている。準備は早いに越したことはないさ」

 ユーラシア連邦は合衆国と並ぶ大国で、地理的にはニッポニア共和国に近くに位置していた。

 それから手渡された分厚い資料の表紙には、Operation Shining Spiritと書かれていた。

「素晴らしき精神による作戦ですか……」


 中佐は作戦資料を一読するとため息をついた。

「つまりは、サンドスターの噴出している山の頂上を爆撃で耕した後、さらに輸送機で水とコンクリートを撒いて火口を塞ごうということですか?」

 読み終えた中佐は答えた。

「他に有効な手があるかね? 時間の問題もあるのだ」

「確かに、でかい蓋をつくってかぶせるわけにもいきませんでしょうね」

「そうだ。そのために現在、空母ジュピターを旗艦とする艦隊一つに戦略ステルス爆撃機 ‘スピリット’ を予備を入れて二機、大型輸送機は十機ほど動員できるよう準備をしている。君が必要と考えるなら、さらなる増援も可能だ。作戦の成否は君の指揮に掛かっている」

 これは命令だった。ルイス中佐に断るという選択の余地はなった。ただ、今気がかりなのは、休暇はいつとれるのだろうかということだった。

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