第11話 遭遇
教授達は新たに輸送機で運ばれてきた改良版サンドスター濃度計をジープに積み込むと、エーレンベルクとミヤタケ研究員の三人揃って山に向かった。今度の濃度計は前回よりも小型になった上、エーレンベルクの助言のもと車載を前提とした作りになっていた。
そして、教授は相変わらずナタリー・ロペス博士のセルリアンに気をつけてと言ったことが気がかりだったが、だからと言って仕事を放り出すわけにはいかなかった。ただ気を付けるしかなった。それから余りに突飛なことであったので半信半疑に思っていることも、また事実だった。
山の中腹あたりまで来た雑木林のなかだった。
「ここら辺は濃度が高いですね」
濃度計の針は先ほどから大きく揺れていた。あるとき、教授が目盛りを覗きこんだ際に針が突然大きく振れた。と思うと針はゆっくりとゼロを指示して止まってしまった。
「おや、どうした?」
教授は軽く指示計のところを指先で叩いた。
「なんてこった! どうやら数値が高くて振り切れたみたいだ」
接続していたラプトップのパソコンを確認していたエーレンベルクは叫ぶように言った。
それから教授は、なぜか頭の中に “サンドスターρ” という単語が浮かんできた。何か考えが浮かびそうだったが、ミヤタケ研究員の言葉にやぶられた。
「教授、エーレンベルクさん。セルリアンがいます」
ミヤタケ研究員は前方を注視していた。
「おっと! こっちの方もだ」
いつの間にか辺りには大小いくつかのセルリアンの姿が見え隠れしていた。
「セルリアンの襲撃か……」
教授は小さな声で呟いた。
だが、彼らの何か武器になりそうなものは工具箱に入っているスパナとハンマーくらいだった。
「教授、この道はどこに続いてましたっけ?」
ミヤタケ研究員はジープがすぐに発進できるよう身構えながら訊いた。
「どうだったかな」
突然のことに考えが回らなかった。
「来た道を戻るとしても、ジープをどこかで転回させないと」
濃度計がしっかり固定されているか確認しながらエーレンベルクが言った。
「確か、少し戻った所にひらけた場所があった」
だが、深く考える暇はなかった。突然、目の前に見上げるほどの大きさのセルリアンが現れたのだ。ミヤタケ研究員は素早くバックギアに入れると後ろに向けて急発進した。
「み、ミヤタケ君! 気を付けて運転を」
「しっかりつかまってください!」
放り出されまいとして教授とエーレンベルクは座席にしがみついた。
「危ない!」
横から小さいセルリアンが飛び込んできたが、エーレンベルクが手にしたスパナで叩き飛ばした。
セルリアンとの距離を離しながらしばらく走るとひらけた場所に出た。
「掴まってください!」
ミヤタケ研究員は間髪いれずにサイドブレーキをかけてジープをスピンさせ、上手く車両の向きを変えた。
「まだ、追いかけてきますよ」
後ろを見ていたエーレンベルクが言った。
「飛ばしますから!」
ミヤタケ研究員は一言言い終わらないうちにジープを発進させた。と、その時目の前に人影が現れた。ミヤタケ研究員は急ブレーキをかけ、教授達は危うく前方に放り出されるところだった。
「た、助けてください!」
横の方から突然、緊張した叫び声が聞こえた。教授達が目をやると、そこには二人の少女……ではなくフレンズの姿があった。加えて、声を上げたフレンズはもう一人のフレンズをを背負っている状況だった。
「いったい何事?」
「乗って! セルリアンが来ます!」
エーレンベルクが後ろを確かめると叫んだ。そして教授と二人がかりで素早くフレンズ達を荷台に引き上げた。咄嗟のことだった。あれこれ考える暇などなかった。
それからミヤタケ研究員は素早くギアチェンジをしてジープの速度を上げた。ここ最近酷使しているジープ、アクセル全開に加えて麓からは砂漠気候に入るのでエンジンのオーバーヒートが気になるところだったが、ミヤタケ研究員は構わずジープを走らせた。
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