第3話 幼馴染の出現

 どうしよう、あの名刺が頭から離れなくて、授業が全く頭に入ってこなかった。

俺の夢はラノベ作家だ、その夢が叶うかもしれないんだ、だって、斬撃文庫と言えば

あの、「この素晴らしいお布団に、祝福を」とか「ニート転生~異世界行っても本気でない~」とか出版してるとこだぞ?! 

俺は夢をかなえるため、あの斬撃文庫には何度も小説を送っている。

まぁ。一度も賞はとっていないが...... そんなあれこれ考えているともう学校が終わっている。

そうやってトボトボと歩いていると


「や~や~光君ではないか! どうしたんだい? そんなに冴えない顔して! ド○らえもんの○び太君のような顔になっているよ」


そう言って話しかけてきたのは幼稚園からの幼馴染上坂 白こうさかしろ俺は、白は最初は男だと思っていた、しかし、小学校に入り、背の順で男子と女子に分かれて並ぶとき、白は女子のほうに並んだのだ、俺は、『おい白、お前はこっちの列だろ』そう言って、白を引っ張ったら、ものすごいビンタが飛んできたんだったよな、今となっては楽しい思い出だ。


「おお、白か 今日はいろいろあってな! って、それはひどくね?!」


「いや~でもね! ほんとにそんな感じだからさっ、僕でよければ相談に乗るよ!」


「それは、ありがたい話だが遠慮しておくよ。そこまでひどくはないから」


「そうかい、そうかい、光くんは僕を信用してくれないんだね、ふ~ん、いいよ~だ」


そう言ってそっぽを向いてしまう、白の赤く短い髪は光で反射され輝いていた。


「い、いや、そうではなくてだな」


いや、ほんとにこれは絶対言えないんだ.....ッ! 許してくれ、白。

しかし、家に着くまでずっと無視され続けてしまった。


そして__


俺は家に入り、いつもと同じく


「ただいま~」


と声をかける。 3年前までならかからなかった声だろう、しかし今は、違う。


「兄さんおかえりっ」


妹はなぜか帰りは早い、俺が帰るころにはいつも家にいる。 

七海は絶対に部活に入ろうとはしなかった、運動神経は抜群なのに、だ。


「なぁ、七海。 お前も小説、書いてみたらどうだ?」


提案してみる、俺は小学生4年生ぐらいから、アニメやラノベにはまって、妹ができたあともおかまいなしに見まくっていた。すると俺の影響を受けたのか、中学に入るころには、俺と同じくらいのアニメ好きになっていたのだ。だから、時間がありそうな七海にそう言ったのだが......


「い、いやっ! いいいいいよ! お兄ちゃんみたいに面白い小説は書けないからっ!」


 どんだけ嫌なんだよ、しかし、俺の小説を面白いってゆってくれるのはありがたい、リアルで見せられるのは、七海ぐらいだからな。


「そういえばね!兄さん お隣さんが実家からミカン送られてきて

食べきれないから、おすそ分けくれたよ」


「おお、まじか それはうれしいな」


急に話を変えだす、何かあるのだろうか。


「兄さん そういえば、斬撃文庫から手紙きてたよ」


きっと、”不合格”の知らせだろうな、まぁ、いつものことだ。

だが、もしも、とういうことがある、念のため聞いておこう。


「おお、まじか! なんだって?」


「見事に!!」


み、みごとに!? ま、まさかッ......!!

「おう!」



「落選です!!」


「だろうな」


いや、わかってたよ。だって毎度のことだもん、いや、わかってたし......うん

うわああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!


「ほんっと! 斬撃文庫の人たちはきっと目がないんだねっ! あんなにおもしろかったのに......」


俺のことのように悲しんでくれているッ......!  妹! LOVE!


そう思って抱き着こうとするが


「ち、ちかよらないでっ!」


バシンッ 


一発ビンタを食らった俺は、一つ考え事をしていた。夢はもう、ほんとに諦めたほうがいいのかもしれない。何度やっても無理だ、というか、別に斬撃文庫だけじゃなくていいんだよな、”スピーカー文庫”にも送ってみるか、なんて考えていると、ふと今朝のことを思い出す。

あの名刺...


「なぁ、七海?」


「何? 兄さん」


「俺がラノベ作家としてプロデビューしたらどう思う??」


ふと、妹の気持ちが知りたくなった。


「に、兄さんがっラノベ作家...... 夢だもんね、いいと思うよ、あと、す、すごく......」


「すごく?」


なんでそんなにためるんだ、きになるだろ


「なっ、なんでもない!」


言えよコラ


「言いたくないことならいいが。 んじゃ、飯ができたら読んでくれ」

といって部屋に戻る。


もう俺にはこれしかないな...... なんて思いながら名刺を見る.



「よし!」


俺は決意し、名刺の連絡先へと電話を掛ける。


斬撃文庫 編集長 水野 080-xxxx-xxxx


「ガチャ」


でた。


「はぁ~いどっちらさまぁ~~??」


話したくねぇッ......!!!

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