フラヴィヤの独白
リナエストに来てから2週間ほど経ったか。私はプスニスティヤに滞在して自分の悪癖を思い知った。
どうにも私は、物事を見るときに自身の感情ありきで見てしまうようだ。
リナエストの国民達は、常日頃テロの脅威にさらされて、さぞ疲弊しているだろう、さぞ怯えていることだろう。そう思い込んでいた。
恥ずかしい事に彼らに同情し、憐れんでいた。
しかし、実際にこの街を歩き回ってみるとどうだろうか?
確かに瞬きする間に死んでしまうような、不安定な情勢ではある。だか、住人達はそれほど気にしている様子でもない。先日は砲弾で家が倒壊したという人に出会った。彼は死人がいなければそれでいいと言って、瓦礫の中から使えそうなものを引っ張り出しては早々に新居に越していった。
爆弾の影響で片脚を喪い、伴侶を亡くした女性と出会う事もあった。さぞ打ちひしがれているだろう、そんな風に思ってしまった。しかし彼女は気にするだけ時間の無駄だと語った。失ったものは戻らない。それに思いを寄せるのは大切だが、囚われていても腹は膨れないと。
誰もが気丈に振る舞っているのだと思ったが、それは大間違いだった。そもそも前提が違うのだ。
このリナエスト島は、古くから3カ国の係争地であった。
布告なき市街戦など日常茶飯事。誰かが支配したと思ったら、違う誰かが打倒し支配する。終わりの見えない争いを、この島の住人は何世代にも渡り経験してきた。
その結果だろうか。彼らは自身を含めた生死というものに、無関心になっている。
死ねばそれはそこまで。リパラオネ教の教えに従えば、命は次に転生するという。
敬虔な彼らは次に向かった命へ思いを預けない。今は今。次は次。
私の知らない考え、世界がここにあった。私の浅慮や同情などそれこそ意味がなかった。
isztät ü isztäš エイトフ @briah
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