プスニスティヤ 第6区
軍装したシャローデャに案内されながら、私はあまりの光景に目を疑っていた。
「いったい全体どうすればこうなる?」
プスニスティヤ。ほんの10数年前に対ラーデミンとして要塞に改造されたこの町は、今ではテロリストとの戦いの第一線となってしまっていた。
そして、シャローデャに連れて来られたこの第6区はつい先日戦闘が行われたとの事だが、果たしてどうやったものか。街の4割は黒く煤け、2割は未だ業火が渦巻いている。
「火炎放射器だ。そこかしこにばら撒くものでだいぶ消火に手間取ってしまっている。」
「だろうな。……しっかしまぁ……」
これらの所業をおこなったテロリストも、元はリナエスト人である。
「なぁ。イスケ・リナエストの目的ってのは、自分らの国を作る、だったよな?」
「確かにそんな御題目だったな。」
「んでも、リナエスト・オルスはイスケ・リナエスト・オルスの建国を一度は認めた、ってか、今でも北側は彼らのものっていう扱いなんだろ?」
「どこかの雲上人達からは猛反発があったがな。」
「そりゃごめんなさいね。」
内戦当初、遠い異国の地でリナエスト軍から離反したテロリスト達は、自分達の国を建国する事を世界に対して宣言した。ユエスレオネやPMCFがその声明に対し当然拒絶を表明したが、当のリナエスト側はあっさりとその主張を認めた。
「世界的にはどうあれ、目的そのものは達成した訳だ。」
領土として土地を手に入れ、テロリスト達はリナエスト島北部に帰還した。
形はどうあれ目的を果たした彼らイスケ・リナエストに、戦闘を続ける必要があったのだろうか。
「欲が出たか、或いは声明自体が建前でしかなかったか。実際の所は奴らにしかわからんさ。戦いが続いてる以上、奴らなりに目的がある。だか、それは俺たちには関係ない。」
シャローデャはそう言い切ると、煤けた町並みを進んでいく。
「関係ない、か。まぁ、それはそうだけど、俺は気になるんだよなぁ。」
私はシャローデャの後を追いかけながら焼けた瓦礫を、或いは生き物だったかもしれない塊を写真に撮り続けた。
「ん?」
足下に何かのケースが転がっていた。半開きのそれは、一見すると空のようだったが、紙切れが入っている。焼けていないのが奇跡としか言いようがない。
好奇心に駆られてその紙を持ち上げると、それは見る間に崩れ去っていく。
ほんの一瞬であったが見ることのできた内容は、まるで見覚えのない、文字のような、よくわからない記号が記してあった。
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