スカマーレイユ 空港にて
リナエスト・オルス共和国
私がこの国の土を踏むのはこれで3度目。1度目はPMCFと連邦の条約締結後のセレモニーの時。
そして前回と今回はどちらも、リナエスト内戦に関わるものだ。
それはそれとして、だ。
「暑い……」
以前にも増して気温が高い。空港に降りてからというもの、汗が止まらない。これで10何年前はもっと暑かったというのだから、この島はこの世の地獄か何かだったのだろうか。
「フラヴィヤ!」
名前を呼ばれて振り返ると、馴染みのある鉄面皮が立っていた。
「お久しぶりです、シャローデャ。」
久々の再開、少しは礼儀正しくて思っていたのだか、無愛想な護衛官殿には関係なかったらしい。
「何をボーッと立っている。ここの情勢を忘れた訳ではあるまい。」
「別にそんなつもりはなかったのだが」
「お前の事だ、余計な考えに耽っていたのだろうがな。……こんな時間か。」
シャローデャは携帯端末で誰かに連絡を取ると何やら早口でまくし立てている。大方、強面の部下の方々に無茶振りでもしているのだろう。
「車を待たせてある。行くぞ。」
通話が終わるなりこれだ。
「もう少し、再開の余韻とかそう言うのはないわけ?」
「いらん」
私が今回この国に来たのは、リナエスト新政府からの招聘があったからだ。
紛争被害調査プロジェクト、その一環として私は各地の様子を写真に収める為にやって来た。
「だいぶ古いな……何年前の型だ?」
「……文句があるなら貴様は歩いて来い。」
「それはご勘弁。」
だいぶボロがきているように見えたが、乗ってみた感じはそう悪くない。むしろ良く手入れをされている。
「それで、どこに行くんだ?」
「プシュニィシュヒヤ第6区。」
「プシュニィシュヒヤ、プシュニィシュヒヤ……プスニスティヤか!前線じゃねぇか。近寄っていいのか?」
シャローデャはフン、と鼻を鳴らした。
「何のための俺だと思っている。貴様こそ自分の仕事を忘れるなよ。」
「はいはい。わかってますよ。」
万一の時はこのシャローデャが護ってくれる。その事は理解しているが、早速未だテロが続く土地へ向かうのは抵抗があった。
「あっ」
考えこみ思わず窓の外に目が行ってしまった。
数年前は綺麗に整備されていたはずの町並みの中は、その2割ほどが瓦礫へと変わっていた。
忙しなく歩き回る人々は見えるが、果たしてその足取りに、本当に活力はあるだろうか。
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