第3話

もう7時前か。香山と部活見学を終えて商店街にあるソフトクリーム屋のベンチに座って駄弁っていた。


ふと気づいたことがあった。


「なぁ香山、どうでもいいけどさ」


「ん?」


香山はほっぺたにソフトクリームをつけたままこちらに顔を向けた。


「細恵川先輩さぁ、なんでお前のこと”浩太郎くん”じゃなくて”香山くん”って呼んだのかな」


「は?なんだそれ、俺の名前は香山 浩太郎だ!何か違っているか?」


こいつ・・ただの馬鹿なのか?


「いや、葉山先輩はお前のこと”浩太郎”って呼んでいたんだ、だったら細恵川先輩はお前のこと”香山くん”じゃなくて”浩太郎くん”って呼ぶだろ普通」


「あぁたしかに、細恵川先輩とは初対面だったし、自己紹介もしてないな・・なんで俺の苗字がわかったんだろう・・」


「ま、本当にどうでもいいんだけどな」


「なんだよそれ、そっちから聞いてきたのに」


香山は未だにほっぺたにソフトクリームをつけたままだった。


まぁこの問題はさして難しくなかった。本当にくだらない答えだ。


香山の持っていたバックにネームプレートがつけてあった。


そこに書かれていたのは”香山 浩太郎”


細恵川先輩はそれを見たんだろうな。たぶん細恵川先輩のあの落ち着いた様子からすると

初対面の人には下の名前で呼べない性格なのだろう。見た目どうり内面も綺麗な人なんだな。


「そろそろ帰るか・・」


あぁ・・すっかり暗いな・・。


そのネームプレートに気づくのは次の日の朝、登校した時に香山が自転車のカゴからバックを持ち上げた際に見えたのだ。


次の日の放課後


「ああぁ〜〜今日の英語の授業めちゃくちゃ眠かったぜ〜〜」


香山は大きなあくびをしながらそう言った。


掃除の時間。今日の担当は1棟1階の廊下だった。


「たしかにあの授業は眠かったな、まあ昼休みの後っていうのもあったしな」


無心でモップをかけながら俺はそう答えた。


「いいや、違うね。真也君、君は気づいていたかい?」


急に声色を変えてそう言った。またふざけているのだろうな。


「あれは昼食後によってもたらされる眠気じゃなーーーい!!」


「急にでかい声だすなよ・・」


「あの眠気は完全に馬場先生のせいだ!!真也君!君も聞いていただろう?あのゆっくりと読み上げられる英文を・・・」


馬場先生とは1年3組の英語の授業を受け持っている先生だ。


「なぜだ!なぜ馬場先生はあんなに眠くなるようなスピードで英文を読み上げるんだ!なぜなんだあーーー!!!!」


「ああーーうるさいな!!馬場先生に直接聞いてこい!」


いつもこの調子だ。周りからはよく「本当に仲良いなお前ら」とか言われる。


しかも廊下だから香山のでかい声はよく響く。


「なんだよ〜つれないな〜たまには元気ハツラツになれよ真也」


そう言って俺の肩を軽く叩いた。


「はいはいわかりましたよ。それより今日の放課後、俺ちょっと用事あるから先に体育館に行っといてくれないか」


「用事?珍しいな真也にも用事があるのか」


失礼なやつだな、俺にだって用事の一つや二つぐらいあるさ。

そう思いながら俺は答えた。


「まぁちょっとな」


俺は用事の内容な言わずにそう答えた。まぁクラスで集めたプリントを職員室に持って行くだけなんだが。


「なんだ?もしかして好きな女の子にでも告白するのか??」


「なわけないだろ、職員室だよ用事は」


「なんだよつまんねーな、まぁわかったよ、

じゃあ先に行っとくわ!」


香山はそう行って俺にモップを勢い良く渡して走って行った。


「おい・・まだ掃除終わってないだろうが・・・」


掃除が始まって約5分、掃除の時間は15分だ。


いつか仕返ししてやるからな。


「失礼しました」


職員室から出た俺は早速、体育館を目指そうと思ったが・・。


1棟1階の1番端に職員室はある。


体育館まで少し遠回りしようと思った。ただの好奇心だ。


まだ校内を全部知っているわけじゃないし、ちょっと冒険でもしようかなぐらいの気持ちだった。

「あまり香山を待たせないようにっと」


1棟は4階まである。


1階は 職員室、事務室、保健室がある。

2階は 1年生 1〜5組の教室

3階は 2年生 1〜5組の教室

4階は 3年生 1〜5組の教室


「1棟は別にいいか・・」


4階まで上がる勇気はない、なぜなら知らない先輩がたくさんいるだろうからな。


2棟は特別教室が各階にある。2棟は1階しか行ったことがない。


たしか2棟1階の化学室には授業で行ったことがある。


あそこは薬品臭いし行ったことあるからパスだな。


2棟2階


さっきから聞こえている管楽器や弦楽器の音はここから聞こえていたんだな。


2棟2階全体は吹奏楽部が使っているんだな。あの人数じゃ音楽室だけでは厳しいのか。


人が多いし2階には上がらないでおこう。


そう思って途中まで登っていた階段を降りようとすると下から人影が上がって来た。


「あっ」


なぜか声が漏れた

  

「・・・」


俺は軽く会釈をしてすれ違った。


その人のことを俺は知っている。


なぜなら同じ学年で同じ組の人だからだ。


名前はたしか・・・。


「すがわ__」だったかな・・・。

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