第8話 5番の部屋
旅先でたまに嫌な部屋にあたることがあります。おばけは出そうで出ないのですが、今にも出そうだった部屋のことをご紹介しましょう。
初めてそんな体験をした、中学の修学旅行。友達と楽しく話をしながら宿泊する部屋に一歩入ると突然涙が出てきて、怖くて部屋に入れなくなりました。友達と一緒になんとか入ると、部屋には古くて長細い鏡台がありました。皆はその鏡が怪しいと言うのですが、不思議と鏡に自分が写っていると気持ちが落ち着いたのです。不思議に思って鏡の裏を見ると、古ぼけた御札が貼ってありました。よくわかりませんが、その日はその鏡の前で眠り、翌日も元気いっぱいに修学旅行を満喫しました。
そんな感じで、旅行の宿とその部屋の状態などは行ってみないとはっきりとはわからないため、変な部屋に当たってしまうこともあるのです。2年ほど前に夫婦で泊まった部屋もそうでした。
まずその部屋に入った第一印象は古くて汚い。これだけでも辛いのに、襖とその足元の床に、何かの液体が勢いよく飛び散ったようなシミが。黒ずんだ、茶色のそれが血であるはずはないと自分に言い聞かせても、どう見ても血。これは醤油かコーヒーだと自分に言い聞かせてみても、だとすればそこそこアクロバティックに溢したことになるし、その方が不自然に思えるのです。
さらに、気のせいだと思いたいのが、洗面所の戸がいつの間にか勝手に開いていたこと。
今こうして書いていると、なぜ部屋を換えてもらおうとしなかったのか、なぜ敢えて口にせず堪えたのか、と思います。換えてもらえばよかったとしか思いません。全く霊感も何もなく、お化けも俺を避けていく、などど日頃へらへらと威張り散らしている旦那も、さすがに気味悪く思っていたそうですが、怖がりの私に配慮して黙ってくれていたそうです。なんと健気な。
無事何事もなく堪えきって、2泊もさせて頂きました。
帰り際、部屋番号を眺めながら廊下を歩いていて気がついたことがありました。末の数字が4番の部屋がないのです。なるほどよく見かける配慮です。私達の泊まった部屋の末番は5番。隣の部屋は3番で、4番がなくて、5番。
じゃあ、私達の泊まった部屋が、4番目ですね。
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