第5話 呪いのかけ方

 丑の刻、怨めしい相手の髪を入れた藁人形を五寸釘で打ち付ける。何もそんなおぞましい光景を繰り広げずとも、朝イチでも、場所問わず発動可能ですし、髪の毛や藁人形なんかも要りません。


 写真とそれをつつく物、怨み辛みがあれば、あら不思議。もうその人は無事ではありません。


 正直、非常に悪い行為であると思っているため、原則として、しないと決めています。おすすめもしません。けれど、ただの偶然だと思えば「悪い行為」というのも行儀作法程度の意味しかないのかもしれません。


 これを私に教えてしまったのは祖母でした。

 祖母は職場でいじめられており、辛い想いをしていました。そんな頃のある日の自室、いつも通りに鏡台の前に座り、お団子に結った髪をほどいていると、慰安旅行で撮った集合写真がふと目に留まりました。

 あとはもう、考えよりも先に手が動くだけ。

 祖母はほどきかけの髪のまま、飾った写真を手に取り、次には髪留めのピンで写真のその人を何度もつついてしまいました。

 祖母がしたのはこれだけ。それと、同じようなことをもう一度違う人に。

 その後、知らぬ間に写真をつつかれたうちの一人は癌が見つかって入院のため退職。半年も経たず亡くなられたそうです。もう一人は交通事故に合われ、怪我を理由に退職。


 そして私がそれをしてしまったのは中学二年の夏休みでした。相手は部活の顧問の先生。私はシャーペンの先で先生の顔や体全部をつついてしまいました。

 次に先生会ったとき、先生の顔には大きな青アザがありました。夏なのに長袖を着ているのは、体もあちこちアザがあるからだと言って袖をまくって皆に見せていました。足も。

 自転車に乗っていたところ、車に跳ねられたそうです。


 成人してから似たことを2度3度してしまい、それもあっさり悪いことが起きたため、それ以来やっておりません。

 この話をして、誰かを呪ってほしいと言われたこともありますが、徹底的にお断りしています。なんせ簡単にできてしまうので。


 おばけの話に戻りましょう。

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