第4話 眠るひと

 祖母がお盆に見た、そのひとは、路面電車の席で、ただ眠っていました。


 大きく西陽が入り込む時間帯。空いている車両に祖母が乗り込みました。そのとき乗ったのは祖母だけ。先に乗車していたのはもう一人。

 そのもう一人というのは、眠っていて、細身で、男性か女性かが分かりにくい風貌だったそうです。

 野暮ったいですが、死に顔を連想するような、穏やかでありつつ生気のない寝顔で、西陽に照らされて、そのまま召されていくような感じがしたと祖母は表現します。

 これはひょっとするとそうかもしれないと思いながら、祖母も席につきました。

 少し離れた向かい側で、祖母もつられて、うつらうつらしていたら、そのうち駅につきました。

 途中止まる駅もないのに、やはりその眠っていたひとはおらず、下車の際に車掌さんに聞いても他に降りた人はいないとのこと。

 

 その人がいつどこへ行ってしまったのかはわかりません。祖母が寝ぼけていただけかもしれません。


 ただ、お盆の時期はそんなことがよくありまして。

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