第3話 お盆
お盆、仏教か何かの考え方では、亡くなった人の魂がこの世に帰ってくる時期だそうですが、だとすれば納得でしょう。
まずは軽く、私のお盆体験からお話ししましょうか。
深夜、歩きなれた近所の大きな通り。大きな通りとはいえ、時間のせいで
なんということはなく歩いているつもりが、突然アーケード街の人混みを逆走するような感覚に襲われ、立ち止まりました。
私は、ぼんやりと歩く人の群れの中いて、前から後ろへと人が通り過ぎて行くのです。
鮮明に見えるわけではなく、ガラスに乗った水滴でなぞったような像というのが、かなり的確な表現ですが、共感できる人はいるでしょうか。
もの凄い気配に、わっ、と思ったときには元通りの静けさがありました。
ひとまず、この出来事に対して、帰省ラッシュなのだろう、と受け入れる方向で私の脳は取り乱すのを回避したのもつかの間。この数日以内に同じく水滴でなぞったような鎧兜の三人が突っ立っているのを見てしまい、結局私の脳内は上を下にの大騒ぎでした。
一方、母のお盆体験は自宅で発生。洗濯物を畳んでいた母の耳元で知らない子供の声。
「おばあちゃんと一緒に帰るから大丈夫」
数年前に亡くなった父方の祖母のことか、流産した子供の声なのか、想像すれば思い当たることも無くはないけれど、声が聞こえたのはちょうど五山の送り火が終わる頃だったから、この世に帰って来ていた子供の魂が頼れる誰かと一緒にあの世に戻ることを知らせてくれた、優しい出来事だったと母は思っているようです。
お盆の話、本番はここから。
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