第2話 イキテナイヒト
子供の頃、こんなしつけをされた覚えはありますか。
─知らない人について行ってはいけない。
うちの場合、曾祖母はこれにもうひとつ加えて私に教えていました。
─知らない人と、イキテナイヒトにはついて行ってはいけない。
イキテナイヒトって何?と聞くと曾祖母はこんな話をしてくれました。
「おばあちゃんが小さいとき、おばあちゃんのおばあちゃんは死んで、もうおらんのに、現れて、おいでおいでって呼ばはったんや。怖くて柱にしがみついて、嫌や嫌やって言うてたら消えはった。めっちゃ怖かったわ。空襲よりも怖かった。空襲もすごかったけど。とにかく、生きてない人が来て呼ばはっても絶対についていったらあかんで」
それは確かについて行かない方が良さそうです。ついでに空襲の話もしてくれました。
「ショウイダンが家の屋根を突き破って落ちてきて、硬いところに当たったら、こーんって音がするねん」
ーという怖い話はさておき、私は絶対について行かないと約束したにも関わらず、生きている知らない人に何度かついて行ってしまったことがあるのですが、幸い生きてない人に呼ばれることなく無事に大人になりました。
イキテナイヒトは生きてない人。
人なのに、そこに今生きていない人の姿や気配に遭遇してしまう。
それが、おばけの話。
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