第二幕 終章 ロペ ヤツヲ、アンフェルの邂逅
「さぁ、悪いけどちょっと急いで。追手が来るだろうから。だけど7時すぐの汽船に乗ればもう大丈夫。それを逃すとまずいけど、ここから港までは歩いてすぐさ。ああ、段差に気よつけて。そしたら、ここの梯子を上って……その服動くのは大変だね、綺麗だけどどこかで替えを手に入れたいね。うん、よっこいしょ」
堀から伸びた梯子を上り、街路を跨ぐ小さな陸橋へと二人の影が現れる。ロペとヤツヲだ。既に空は曇天が張っているが、朝靄の中でわずかな日光が乱反射して、この街にも朝らしい光が満ちている。
陸橋は夜の間に凝固した湿気によって濡れていた。欄干には水滴が張っている。ロペはそれを浚って、煤に汚れた手を清めた。
「それじゃあ、いこうか」
そしてヤツヲの手を取るために左手を伸ばすが、彼女はそれに応じなかった。ただ陸橋の先を、威嚇するかのように見つめている。
ロペは彼女の視線を辿る。その先には、男がいた。逆光になっていて正しくその姿を見ることはできない。唯一わかるのは、彼が汚れた塹壕套を着ていること。とても大柄だということ。そして、他でもない自分たちに向かって笑いかけたこと。
「いい声してるなぁお前」
塹壕套の男――――アンフェルは、話に聞いた少年と少女を見つけると、煙草を口から零し、踏みつぶした。
「もっと、聞かせてくれよ」
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