四つ目の話 マッチ売りの少女は火を放つ

消えてしまう。全部、消えてしまう。

暖かな暖炉、美味しそうなご馳走、優しい家族。

どうして、こんなに早く消えてしまうの?


少女はかじかむ手足より、可哀想な自分の境遇よりも、その幸せな光景が消えてしまうことがなにより悲しくて、誰にいうでもなく問いかけます。


それは火が小さいせいよ。だから、すぐに消えてしまうのよ。

もっと大きな火なら、消えないんじゃないかしら?


それは、誰の声だったのでしょう。

天使の声?悪魔の声?

どちらにせよ、少女の心に巣食う何者かでは、あったのでしょう。


もっと、大きな火。


少女は、もういてもたってもいられませんでした。

あの暖かな光景がもう一度見たくてみたくて、他には何も考えていませんでした。


ああ、なんて綺麗なの。


少女の目には、憧れたものすべてが写っています。

轟々と燃えている家の中で叫んでいる父の声も、火が燃え移って広がって、逃げ惑う人々の姿も。

少女には聞こえないし、見えません。

ただただ、幸せな光景に見とれたまま。

しまいには灰になってしまいました。

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