会話に魅了されて、続きを読みたくなりました。
と言っても、笑うこと必至のギャグが多数あるとか、そういう作品ではありません。
殺し屋の少女と、彼女を運んでいる運転手の男が車内で会話をしている最初のシーン。
会話をしている人間が人間だけに異様な話をしているのですが、
しかしどこか気の抜けた会話で、雑談といった雰囲気があります。
読んでいて楽しい会話なのは、チラ見せされているからだと私は感じました。
赤信号についてちょっと話しているだけでも二人の性格がほんの少し見えてきて、そのチラ見せが気持ちよいのです。
そしてそこらへんは追々きちんと掘り下げられ、明言されていきます。
この先なにを語って、なにを明かしていくのだろう。
そう気になって、どんどん読み進めていきました。
ちなみに、そういう雑談とは少し違うけれど、
ナイフを持った時のコメントと、三話の最後のくだりが私は特に好きです。
ヒロインの少女はもちろん可愛いけれど、主人公である運転手の男も可愛いですよ。
そして四話から一気に物語が動き、結末へ。
読み終わってすぐはこの終わり方が理解できませんでした。
だけど数分考えて、わかりました。
つまり、いつか少女はものさしを握る、ということ。
私が望むハッピーエンドは、きっと二つのピースに分かれて実現するのでしょう。
それが二つのピースに分かれていること自体はあまりハッピーではないのだけど、たぶん少しはほっとしていい結末なのだと思います。
私の好みとは全然違う結末だったのに「こういう終わりも悪くないなあ」と思える作品でした。よかったです。
余談ですが、「僕とキミの15センチ」コンテストは1万文字から1万5千文字の短編のコンテストで、
この作品の文字数は1万4996文字。
1万5千文字に収まるようにするのに苦労があったのではないかと思います。
そして最終的にこの文字数に着地したところに、作者のパワーを感じました。