御堂美冬は恋に溺れる
(一)御堂 美冬
なにもかもが初めてで、落ちる所まで落ちる、とはこういうことなのか、と美冬は頭を抱えた。
イラストのためにペンを握らないことが続いたのはこれが初めてだった。
しばらく離れる程度だったら描けなくなることはない。腕が鈍っても、
なのに、今回ばかりは手につかない。
下手になっているわけでもモチベーションが下がっているわけでもない。だというのに、イメージ通りの画が浮かびあがらない。
指定された場面と設定の描写を、平面に落とし込めない。
「違う。こうじゃない。こうじゃ、ないのに……」
一人きりの部屋の中、諦めの境地に達した美冬は俯きながらぼそりと呟いた。
例年よりも早めに梅雨が明けるという天気予報士の宣言通り、七月初旬の東京は日中で三十度を超す日が出てきて、いよいよ本格的にエアコンを稼働しはじめなければいけない時期に差し掛かっていた。茹だるような暑さが、やる気をさらに削ぎ落としていく。
丸一日PCと向き合っていたというのに、美冬の作業は遅々として進まなかった。
しばらく掃除をすっぽかしていたせいで、夕暮れが差し込む部屋には雑誌や漫画の類が散乱している。とてもじゃないけれど、誰かをここに招くなんてことはできない。足の踏み場がない部屋は、窓を開けて換気をしているにもかかわらず淀みが消えてくれない。
美冬は目の前のモニターに表示されているイラストを悄然とした面持ちで見つめた。
画面に映る、泣き崩れそうな一人の少女。溢れ出す涙に塗れた悲しい表情。
同人作品であれば、表紙にもできた一枚だと、迷いなく断言できる。
けど、違う。
これは、クライアントの望むものではない。こんな絵を描けとは頼まれていない。
「どうして……」
美冬は頭を抱える。
どうして描けないのだろう。なんで描けなくなってしまったのだろう。
――憤りと、悔しさと、不甲斐なさと、そして決意が綯い交ぜになった泣き顔をお願い。
優希にそう言われ、あまり描いたことがない構図の絵柄だったこともあって悩んだ。けれど、創作の幅を広げるにはいい機会だと考えて、受諾した一枚。
まさか、そんな一枚にこれほど
こんなシーン、引き受けなければ良かった。別の場面に――得意分野である日常シーンにしてくれないかとお願いすれば良かった。
受注した仕事が完成できない。絵で飯を食っている人間として、これはまずい事態だというのははっきりしている。なんとかしないといけない。
でも、どうすればいい?
泣きに入って簡単に首を振るような原作者と編集者じゃない。しかも、六巻。これからアニメ化するにあたっての、一番重要な部分。そのシーンをイラストレーターが表現しないというのはあり得ない話だ。それが分かっているからなお苦しい。
「やばっ。電気点けないと」
足の踏み場もない部屋の中をつま先立ちで縦断し、廊下にあるスイッチを押して電気を付ける。
「あっ……」
そこで思い出す。電球を取り替えなければならないのだった。明滅を繰り返す電球をしばし眺めてから、スイッチを切る。
「買い出しにいかないと」
どうせ、このまま部屋の中にいても筆は進まないのだし。
ジーンズのポケットに財布を突っ込み、無造作に積まれた衣類の山から薄手のカーディガンを引っ張りだしてシャツの上から羽織る。サンダルを履き、玄関を出て鍵を閉めると、奇遇にも隣の部屋から優希が出てきた。いつものスウェット姿だ。
「あれ、珍しいね。美冬がこんな時間に外出だなんて」
「……ユこそそっち
アパートの二階廊下を歩き、階段を下ってとぼとぼと歩道に出る。坂の上から街灯が一直線に立ち並ぶ都道。大学と連結している駅から、サークル活動を終えて坂を下ってくるバンドサークルの一団がわいのわいのと騒いでいる。反対側の道では、近くの市営体育館で練習を終えたバドミントンサークルの面々がファミレスに入っていく姿が見えた。誰も彼もが夏の装いに身を通している。
「どこまで進んだ?」
坂を下ったところの交差点で信号待ちの折りに美冬が訊くと、優希は困ったような笑みを浮かべた。
「六巻のラストまでは一応。そこからどうしようか悩み中。選択肢がありすぎてさ」
「そっか」
贅沢な悩みだな、と美冬は思う。普段だったらさらっと聞き流せるはずなのに、今だけは妬ましさすら覚えてしまう。
信号が青になる。
「美冬は?」
「私は逆に、てんでだめ」
「てんでだめって?」
「……ラフより先に進まないの」
「……そう」
優希がスクランブル交差点の真ん中で立ち止まり、美冬へと振り返った。感情の色が抜け落ちた、一見すると間抜けにも見える表情。けれど、その顔をしたときの優希の怖さを知っている。爆発しないように堪えているのだ。感情がこれ以上増幅しないよう押さえ込む反動で、無表情になっている。優希の癖。
その表情なのだと認めてしまうと、美冬の背筋に冷たい感触が走り抜けた。咄嗟に優希から目を逸らす。
「今日、いいよね?」
いいよね? と訊いてくる、穏やかで暖かみを装った声。その裏に隠されている激情の炎が夕陽のように滾っているのがわかる。
「美冬はなにが食べたい?」
「私は……なんでもいいよ」
答える声が擦れた。夕飯の内容なんて、もはやどうだっていい。
買い物を終えて部屋に戻るまでが、覚悟するために与えられた猶予だ。
彼女は、なんだってする。作品のためなら、自分があらゆる方面で晒し者になることも、人並みの幸せを捨てることも、それを他人に強要することだって
きっと、酷いことになる。そう分かっていても、止められない。
「ちなみにあたしはお寿司がいいな。今の時間なら夕方特売で割り引かれてるだろうし、安上がりだ」
優希の声が、弾む。
「で、なんで描けなくなったの?」
「分からない。分からないのよ。描けないの。手が、思うように動いてくれないの」
「なにそれ? あたしも流石にキレるよ? 仕事だよ、これ。失敗も遅れも許されないんだよ、次の巻は。それをさ、そんなわけわかんない理由で無理ですって宣言されても困っちゃうよ」
乱雑とした優希の部屋で卓袱台越しに顔を付き合わせる。二人の手元には、綺麗に片付いた寿司パックの残骸が二つ。緑茶がなみなみ注がれたコップは、硝子の表面一杯に水滴を作っている。
周囲には、ブロックタワーの如く積み上げられた書籍の山がいくつも折り重なって、連峰のようになっている。本の自重で床が抜けるのではと危惧するほどの量。入学してからの三ヶ月で、軽く数百冊以上は増えているようだった。
反面、この部屋で人が暮らしているとは到底思えないほど、その他の雑貨の姿が見えない。部屋というよりも、書物を置いておくための倉庫のような空気が満ちている。
美冬はこの部屋が苦手だった。
開放感がない。生活感もない。人が長居できるような空間ではないからか、息が詰まりそうになる。図書館のような静謐さに、独特の圧迫感と閉塞感。閉じこもるために用意された環境は、美冬の部屋に広がる雑然さとはまるで違う。こんな部屋にいては、心に余裕なんか持てない。
常に切羽詰まっている部屋の主の心境をそのまま具現化しているかのようにも思えた。圧縮された空気の重みが、身体にずしりとのし掛ってくる。
完全にアウェイの中、美冬は詰問されていた。
対面する優希は、苛立ちを隠さずに言葉をぶつけてくる。
「プロでしょう? 美冬。だったら、できないなんて言葉はね、受けるか受けないかを判断する段階で言わないと駄目じゃんか」
「受けたときは、できると思ったのよ。実際、ラフまではできてるの。でも、そこから先が駄目なの。どうしても違うものが浮かびあがってくる」
「駄目なのは分かったよ。その理由だよ。ここまで来てとぼけるつもりじゃないよね?」
「分からないわよ、そんな――」
「いい加減にしろよ」
優希の一言に、美冬は続けるはずだった言葉ごと息を飲んだ。
相手を抉る意志が込められたナイフがその思惑通り、美冬の心奥に突き刺さる。きた、と思うと同時に肌が粟立つ感覚。
美冬は反射的に唇を噛んで、込み上げてくる気持ちをぐっと堪える。ここで怯えたら、泣いたら、優希の思うつぼだ。
「原因なんか一つしかないでしょ?」
「そ、れは……」
「付き合いだしたって美冬から報告を聞いたときは諸手を挙げて喜んだよ。ああ、それはもう、我がことのように嬉しかったさ。でも、なんだよ。恋愛に
ぐうの音も出ない。彼女の言っていることはすべて正論で、間違っている所なんて一つだってありはしない。
でも、
「彼のことは、関係ないっ」
美冬は強く否定する。この事情に、彼を巻き込むわけにはいかない。
渚から譲ってもらったスカーレットのライブに誘った
スカーレットのライブが終わった夜、美冬から告白をして、OKをもらった。あの瞬間に飛び跳ね回る心の高鳴りは、きっと一生忘れないだろうなと確信できるほどに嬉しかった。
絵に触れなくなったのは、それからだ。
隣に彼がいる、そんな日常が始まった。小説や漫画を読み、イラストを描く時間は、彼と過ごす時間になった。優しくて、誠実で、そのくせ少しだけ甘えたがりで、そんな彼が愛おしい。絵を描いている時よりも、真秀の隣で彼女を演じている時のほうが大切な時間になった。
そうして美冬は彼に溺れ、恋だの愛だのに現を抜かした。挙句の果てに、スランプに陥った。現状をそう決めつけた優希は、堕落に身を浸したままの美冬を睨め付ける。
「描けよ。描かないなら、やめちまえよ。恋愛に現を抜かした程度で一枚の挿絵すら完成させられないなら、イラストレーターなんてやめちまえよ。その程度で仕事が手につかなくなる相手となんか無理だよ、あたし」
「だからそれを相談しようと思って――」
「ばっかじゃないの」
傷つける意志を持った罵倒に言い返せず黙っていると、優希の感情の矛先があってはならない方向に傾きだした。
「そうか。あの男が悪いのか」
「な、なんでそうなるのっ!?」
「だってそうでしょう? 彼さえいなくなれば美冬は描くんでしょう」
「違う、それは違う! 悪いのは私で、真秀はなにも悪くないっ!」
悪いのは全部私だ。言外にそう言い切る。
すると優希は、愕然としたように目を見開き、唇を震わせた。
「嘘、でしょ。そこまで彼のこと好きなのか。こうなったのは全部自分のせいだって言い張るほど、彼のこと、好きなのか」
美冬を見つめる優希の目。今の発言を撤回してよ、と懇願しているようにも見えた。そして同時に顔を出す、徹底的に恋愛感情を見下すような態度。
それが気にくわない。
やっぱり、優希には分からないんだ。頭のねじが外れているから理解できないんだ。
そう悟ってしまうと、あとは簡単だった。黒い感情が美冬を抱きしめる。その心地よさに身を委ねて、本音をぶちまけてしまうのはあまりにも容易かった。
「……悪い? 好きよ。大好きよ。好きで好きでたまらないわ。彼と一緒にいるだけで幸せだって思えるもの」
「――はっ、はははっ。本気? ねえ、それ本気なの?」
首を振り呆れたような表情を浮かべる優希の、その小馬鹿にするようなその仕草に美冬は怒りを覚える。はっきりと分かる。この感情は怒りだ。
「なにが、おかしいの」
無意識のうちに、真っ黒な衝動に染まった感情が口から出ていた。
「彼を好きでいることのなにがおかしいのよ。恋愛のこと、なにも知らないくせしてさ」
きっと、自分の作品にしか愛を注いでこなかった優希には分からない。
人を愛すること。誰かを好きになること。そういう感情を抱くことさえ無駄だと割りきって、他人との関わりを削ってきた友野ユーキという作家は、恋を知らない。この感情の高ぶりを知らない。だから理解の一つだって示してやれない。
この胸に生まれる痛みも、幸せも、苦悩も、煩悩も、焦がれる想いも、止めどない気持ちも、なに一つとして、知らない。
だから、平然とそんなことを口にできる。恋も仕事も諦めたくない、なんて巷に溢れたその言葉の重みや苦しみを
「本気なんだ」
「本気だったら悪い?」
「いいや。別に。善悪の問題じゃない。本気かどうかなんて本題じゃない」
「だったら――」
「あたしが気にくわないのはね、美冬。あんたが、彼が好きで好きで仕方がないから仕事がなおざりになってもそれはしょうがないって、そう言ってることだよ。恋愛したことないあたしを見下しながら、創作活動なんて恋愛一つで疎かにしてしまえる程度のもんなんだって、仕事仲間のあたしに向かってそう吐いてることだよ」
「それは違っ――」
「なにが違うのさっ!」
優希が癇癪をあげるように心から叫ぶ。その勢いを美冬は止められない。
自分の言葉でさらに拍車が掛かってきたのか、優希は饒舌になってまくし立てる。
「そんなに彼のことが大事なら仕事ほっぽりだして朝昼晩といちゃつきながら幸せでささやかな大学生活を謳歌すればいいじゃんかよっ。絵なんかやめて、彼に永久就職すればいいじゃない。どうせ挿絵なんて額面的に大して貰えないんでしょ? たまに同人のイベントに出て小銭稼ぐような按配で続ければいいじゃない、商業なんてやらずにさあ」
挑発的な態度は、ついさっきまで美冬を引き留めようとする強情なそれとは正反対だった。
自分の思うままにならないのなら、いらない、と突き放す。
美冬は初めて見る優希の態度に戸惑いを隠しきれない。
「そんなのって、ないよ。なんでそんなこと言うのよ。ひどいよ」
「ひどいだって? どっちの台詞だよそれ。なに被害者ぶってんだよ!」
優希は徹底的に問い詰める。崖っぷちまで美冬を追いやりながら、逃げ道を潰していく。
「被害者だなんて思ってない」
「ごめんの一つも言わないくせによくそんな態度でいられるな。恋に溺れていることを免罪符にするなっ! 自分で蒔いた種くらい自分でなんとかしろよ。甘えてんじゃねぇよ。あたしがいつでも助けると思ったら大間違いだよ。我儘も大概にしろよ。仕事を馬鹿にされてんだよ、あたしは、あんたにっ! その自覚あんのかって聞いてんだよ!?」
我儘。私が、我儘? これが、我儘だというの?
恋も仕事も諦めないことの、なにが悪いの。恋愛が上手くいって仕事が上手くいかない、ただそれだけ。そんなのは欲張りのうちにも入らないじゃない。
恋も仕事も諦めたくない。ただそれだけだというのに。
それをあなたは我儘だというの?
「私は、欲張ってなんか、ない。馬鹿になんか、してない」
「勝手にそう思ってろよ。あたしはあんたの言い分なんか認めてやらないからな」
「ユーキも恋愛すれば私の気持ちが分かるようになる。する気もないんだろうけどさっ」
感極まった声は、裏返って擦れた。
優希は、美冬の言葉を静かに受け止めるだけだった。吐き捨てるような言葉ですら、彼女の心を動かすことができない。美冬がぶつけた感情ではびくともしない友野ユーキという作家の芯は、あまりにも強く、太い。
「恋愛なんて、するわけない」
憎々しい感情を吐き捨てるように優希は言った。
「愛がどういうものかなんて、分かってたまるか。愛に溺れて書けなくなるような恋愛なんかあたしはしない。してたまるかよ。恋をしなくても死なないけど、書けなくなったら友野ユーキは死ぬんだよ。頭の中を異性で満たせば満たすほど、くっだらない妄想にメモリー喰われて、生まれてくるはずだった世界とキャラクターが消えていくんだよ。感情の飢えがなくなって、想像力が磨滅してくのが怖いんだよ。友野優希が人並みに幸せになればなるほど、友野ユーキという作家は才能とか熱意とか大事なものを枯らしていくんだ。あたしはまだ友野ユーキでいたい。優希とユーキを同居させられるほど、あたしは器用じゃない」
高ぶりを抑えられない感情が、マシンガンのように優希の口から放たれ続ける。それは、彼女の心の叫びだ。実弾以上の強固な信念が美冬を貫く。
「物語ってのは、パソコンや原稿に齧り付いて、どんなときだって一緒に付き合っていかないと先に進まない。恋愛や遊びに現を抜かすなんて死んでもできない。そうして取りこぼしたものが二度と思い出せない最高の設定やシチュエーションだと思ったら、悔やんでも悔やみきれない。少なくともあたしはね、そういう気概とか必死さを抱えながらいつだって崖っぷちにいるの。落ちるか落ちないかの瀬戸際でずっと書いてるの」
優希が叫ぶ。叩き付けるような声で空気が、心が、震える。
「こんなスタンス、誰にも勧めないよ。だって、普通じゃない。誰でもできるもんじゃない。美冬がどんな気持ちで仕事をやろうが、仕事さえきちんとしてくれればそれでいいよ。でも、恋に仕事にふらふらしたままじゃ、いつまで経っても半端もんのままだよ? 苦しくなったら泣きついてくるような、そんな人に仕事なんか任せられるわけないでしょ」
「ユーキ」
必死にしがみつきたいという美冬の欲望だけが辛うじて彼女の名前を引き出す。それ以外のなにも、言葉にならなかった。ここまで吐き出した優希に向ける答えがなかった。
長い沈黙があってから、先に動いたのは優希だった。ゆっくりと脱力したまま立ち上がり、外へ出て行こうとする。
嘘、という動揺は美冬の喉元に引っ掛かって、声にならなかった。
待って、その行動は違うでしょ。
いつもの優希だったら、こんな風に断ち切れになって終わらせたりしない。徹底的に持論で相手を潰すし、甘えを許さない。崖っぷちに立たせながら、それでも前へ進めと強要してくる。自分が前へ進むためなら、なんだってするし、させる。
なのに。
諦めたような目を湛えたまま、彼女は玄関へと向かっていく。遠ざかる背中。ちょっと待って、と呼び止める美冬の声は届かない。
「描かないとか描けないってんなら、早く氷山さんに連絡してね。じゃないと編集サイドもスケジュール調整が厳しいだろうし」
いつもの調子で優希が言う。まるで、言い争いなんてなかったかのように。
「そんな、描かないなんて、言ってない。私はただ、相談をしたくて」
挿絵を変えられないか、それが厳しいなら別のシーンにしてくれないか。どっちも無理そうなら、せめて一緒に悩んでくれないか。そういう相談を持ちかけるはずだったのに。
「相談、ね。それって、どういう相談? 結局、原因が周防くんなら、その時点でアウトじゃん。恋愛と仕事を天秤に架けるような話だったらなおさらだよ。あたしが言えるのは二つだけ。美冬が周防くんを諦めるか、仕事を投げ出すか、どっちかしかない。どっちもなんて言えない。両方取れよ、なんて言っても責任持てないから。どっちも諦めたくないなら、納期までに美冬自身の力で乗り越えるしかない。あたしはなにもできない。してやれないから」
畳み掛けるようにして美冬を完全に突き放すと、付け足すように「部屋、開けたままでいいから。落ち着いたら帰ってね」と呟いて、優希は部屋を出て行った。
「は、はは……」
美冬は一人取り残されて、力なく肩を落とす。
もう、友野ユーキには縋れない。
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