エピローグ

 学院が休みの日の朝、直人は結局三人の部屋となった客間で目を覚ます。

「はあ、またこれか……」

 いつものように目を覚ますと千紗とリリーに抱きつかれた状態だった直人は一人ぼやく。

「そんな言い方はないだろう?」

「そうですよ兄さん、美少女二人を侍らせておいてなにうんざりしているんですか」

「やっぱり起きてからもやってやがったな」

 やはり確信犯か、と内心突っ込みを入れる。

「それで、兄さん、結局のところ私とリリーのどちらと結婚するつもりですか?」

「そうだ、いい加減にはっきりしてもらわねば」

「そうはいってもな……」

「私を選べばおいしごはんを毎日作ってあげられますし、スタイルだってリリーより断然いいですよ?」

「なっ、私だって夢の中ならスタイル抜群だぞ? 料理はできないが……」

「ほら兄さん、やっぱり私と結婚するべきですって」

「いや、料理だって頑張って練習するから、私と結婚してくれ」

 千紗のリリーの言い争いに、最近はもう一人加わっていた。

「あらあら、それじゃあ私と結婚するべきじゃない」

突如として現れたマリーに、リリーは驚愕する。

「母さん!?」

「おはようリリー。ねえ直人君? 私なら料理もできるし、現実でも夢の中でもスタイル抜群だし、最適じゃない? こんな小娘なんかより私と結婚しましょう」

「ちょっ、ちょっとマリーさん!?」

 直人は途端にマリーから目がなせなくなる。

「マリー、それはずるいです。兄さんに魅惑の魔法を使ったでしょう」

あからさまな直人の変化に、千紗がマリーを非難する。

「いいじゃない別に、私の魅惑を跳ね返すような愛があれば問題ないはずよ」

直人の上に乗り首に手を回すマリーとそれを止めるべく二人の間に腕を入れ引きはがしにかかる千紗とリリー。直人一人に三人の美女が群がっている状況で、今朝も最高にタイミングが悪い彼女がやってくる。

「チサー、ナオトー、リリー、起きてるかしら? もう朝食ができたわよ。それとマリーさんどこにいるか知らないかしら、部屋にいないみたいなん……だ……け……ど?」

直人たちの状況を見て踵を返すアリシア。

「毎朝毎朝よく飽きないわね……それではごゆっくり~~。ごはんが冷めちゃう前に下りてきてよね?」

 最近は慣れたもので、誤解をすることもなくなったアリシアだが、しかしながら直人を救出してくれるようなことはない。

 そしてまた、直人の一日が始まる。

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シスタークエスト 上村 俊貴 @toshitaka-kamimura

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