六月二十日(火)晴れ☁

今日は学校近くのファミレス……つまりは私のバイト先に空良そら先輩と行った。

からかうような店長の笑みに、学校の先輩なだけですから、と否定した。

横で空良先輩は苦笑してた。


空良先輩はコーヒーを、私は紅茶を頼んだ。

お互いに注文したものが来てから、私は言った。

ここには、あかねさんとなにしに来たんですかって。

空良先輩は驚いた顔をしていたけれど、流石に二回いつもと違うところへ行って、二回とも茜さん絡みなら、今回もきっとそうだろう、と予想がつく。

そういえば、空良先輩は納得したようで。


ここにはよく、お互いの写真を見せあって、ああでもないこうでもないって言い合ってたんだ。……ちょうど週の真ん中だからってことで、毎週水曜日に。


どうして水曜日じゃなくて今日来たのかと訊けば、火曜日に私がシフトに入っていることを覚えてくれていて。そのままバイトに行けるし、休みの日にバイト先に行くのは気まずいだろうと思ったからとのこと。

一通り聞いてから、でもやっぱり、胸のどこかでつっかえる物があって。


先輩。この写真たちの中で、どの先輩が一番かっこいいですか?


スマホの、例のフォルダーを開くと、空良先輩に見せた。空良先輩は笑った。

今思うと、ドン引きされなくてよかったな、と思う。

画面いっぱいに写真があって、しかも全部に自分が写ってたら、私だったら引く。

絶対引く。


君ってすぐにムキになるよね。


その言葉に、なにか悪いことを言っていないか、一気に不安になる。


ごめんなさい……。


ううん。謝ることじゃないよ、可愛いなって思っただけ。

うん、でも、こうやって写真見てると懐かしいな。


空良先輩は、優しい目で私のスマホを見た。

スマホっていうより、その先にあるなにかを見つめているようだった。


その視線で、もしかして、と閃いてしまったのだ。


先輩。勘違いだったらごめんなさい。……茜さんとの思い出、私で上書きしようとしてませんか?


空良先輩は、少し考えてから、そうかも、と頷いた。


いつも二人でいた場所を回って。で、今は茜はいなくて、傍にいるのは君なんだって。茜とここに来ることはもうないんだって言い聞かせて、ちゃんと「思い出」にしてるところ。


そう言った先輩は、酷く寂しい笑みを浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る