六月十九日(月)晴れのち雨☂

予報では晴れだって言ってたのに、夕方、いつもの交差点で話していたら雨が降り出して。

普段だったら家に置いてきていた折り畳み傘を、梅雨の時期だからと言う理由で持ち歩いていてよかった。

本当によかった。

空良そら先輩が、傘を忘れてた日でよかった。


死ぬかと思ったけどね!

死なないけども。


折り畳み傘って、小さくてあんまり好きじゃないんだけど、小さくてよかった……のかな?

肩が触れて、申し訳なかったり、ちょっぴり嬉しかったり。

でも、幸せな気分に浸りきることは、やっぱりできなくて。


空良先輩の提案で、私たちは交差点の近くにある公園に行った。

いつも子供たちがにぎやかに遊んでいる声が聞こえていたのに、今日は雨が降ってきたからなのか、誰もいなくて、少し寂しかった。


公園には池があって。

空良先輩は迷わずそこへ向かった。

池の中ではメダカが泳いでいて。

水滴がその影をゆらゆらとぼかしていて。


あかねはよくここで写真を撮っていたんだって、空良先輩は言った。

すごく、寂し気な顔で。

当たり前だけど、水面に映っているのは「茜空の少女」の女の子ではなく、私と空良先輩で。

水面に写った空を、茜さんは空良先輩とおそろいのデジカメで撮ったらしい。


おそろいだから、空良先輩はそんなに大事そうにデジカメを持っているのかな。

茜さんはずるい。

ずっと、空良先輩の傍にいるんだもん。

生きてるときも、死んじゃったあとも。

少しくらい、離れてくれてもいいでしょ。


……最低だ、私。


水面に映った空良先輩を撮った。

今見直しても空良先輩の顔が歪んでよく見えないのは、きっと雨のせい。

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