六月七日(木)曇りのち晴れ
今日、
昨日と同じ夕方。
デジカメを両手で握ったきり、ずっと道路を見つめる空良先輩にせめて電源を入れさせようとしているところだった。そのせいで距離が近かったからなのか、単純に私が異性と二人でいるのが珍しかったのか。
その人、彼氏?
久しぶりの挨拶もなにもなしにいきなりそう声をかけられた。
否定しようと振り向いて、見知った顔に固まった。
花薫と話すのはメッセージアプリを除いて中学の卒業ぶり。
嬉しくてはしゃぐ私に、花薫は苦笑して空良先輩を指差した。
彼氏さんが困ってるよっていうその声にからかう感じはなかったから、おそらく本気でそう思ってるみたい。それが少しだけおかしかった。
空良先輩のことを、本当にざっくりと紹介すると、なるほど、と花薫は頷く。
おかしいと思ったんだよね、なんて言うからなんだろうと聞いていたら、うやら私は、花薫に心配されていたらしい。
いつもじっと他人を見ているくせ。
いきなり人に話しかける上に、だいたい話題が唐突。
結果として、他人から気味悪がられるらしい。私。
書いてて思ったけど、これ、もしかしなくても褒められてないよね……。
というか、それを言うなら、久しぶりの友人を見つけるなり、その人彼氏、なんて問いかけてくる花薫も大概だと思う。
ほら、類友って言うし。
……花薫は私と違って友達多いけど。
隣にいた空良先輩は、ずっと曖昧に笑っていた。
結局花薫と三人で話し込んでしまい、今日も空良先輩はデジカメの電源を入れなかった。
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