六月八日(木)晴れ

昨日久しぶりに顔を見たせいか、なんとなく中学の頃の花薫かおるとのやりとりを見たくなって、久しぶりにガラケーを開いてみた。

今のスマホは、高校の合格祝いに買ってもらってからずっと使ってるから……数ヶ月ぶり。

高校生になってまだ数ヶ月しか経ってないということに、少しだけ驚いた。

メールの内容は、宿題がめんどくさい、とか、眠い、眠くない、とか、テスト怖い、とか。

本当にくだらないメールで、でも考えてみればスマホに変わってからもメッセージアプリで似たようなやりとりをやっているな、と思えば、中学生から高校生になったからと言って、なにかが劇的に変わる、わけではないみたい。

それから、久しぶりに画像フォルダも見てみた。


出てきたのは、たくさんの空の写真。

赤、黄、灰、黒、紫……。

その中でも特に多いのは蒼。

自分の名前が、蒼空から来ていることを知って、私は毎日のようにガラケーで空の写真を撮っていた。

だから、きっと、空良そら先輩のあの写真に惹かれたのかもしれない。

あの写真も、「そら」の写真だから、なんて。ちょっとポエマー?


空良先輩は、今日もデジカメの電源を入れてなかった。

もしかして、ずっと入れてない?

じゃあ、この間車道に飛び出しかけていたのは、歩きデジカメじゃなくて……。

いやでも、そんな、まさか。

たぶん、空良先輩は考え事をしていただけだ。……そうであってほしい。

空良先輩はよく、ボーッとしている。

だからきっと、そう。


そうだ。

明日から、もう一度「そら」を撮ろう。

ガラケーじゃなくて、今度はスマホで。

「そら」は「そら」でも、手が届くほうの「そら」。

芸術部では写真を扱っているのは空良先輩だけらしい。

他の人たちはたまに使うことはあっても、基本的には絵のほう。

空良先輩だって、一人だけカメラを使うよりも、他にも使う人がいたら使いやすくなるはず。

……私は帰宅部だけど。

もしかしたら、電源を入れる、まではしてくれるかも。

なんて、甘く考えすぎかなあ……?

まあでも、もう決めたことだから。

明日空良先輩に言ってみよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る