六月六日(水)晴れ

美術の授業を選択してないから、今日は初めて美術室に行った。

多分、絵の具とか、なんかよく分からないけど、そういう感じの、独特な匂いが印象的。

嫌いじゃない匂いだった。


そこでざっくりとあずさ先輩から、芸術部の活動について聞かされた。

芸術部はその名の通り、芸術に関することならなんでもやっていいそうな。

絵を描いても、人形を作っても、漫画を描いても、写真を撮っても、なんでもオーケー。

部費をちゃんと収めさえすれば、教室にある物はなんでも使っていいらしい。

本当に、なんでもありだ。


その説明を受けてから、私はずっと空を眺めている空良そら先輩の隣に行った。

……空を眺める空良先輩って、なんか語呂いいかも。


なに見てるんですか、と問えば、空を見てた、と返ってくる。蒼くて綺麗だって。

そしたら後ろから手を叩く音が聞こえて、二人で振り向く。梓先輩が笑って、私と空良先輩の肩を掴んだ。


蒼依あおいちゃんと空良で、青空コンビだね!


どこか嬉しそうなその声に、ちょっとだけ胸が騒いだ。

今だって、少しだけ騒ぐ。


だけど、空良先輩は曖昧な笑みを浮かべて。

夕空コンビの次は、青空コンビかって、小さく、本当に小さく呟いた。


血を吐いたみたいな。

針を吐いたみたいな。


どこか痛みを感じる声で。だけどそれは私にしか聞こえていなかったみたいで、梓先輩は、うんうんと頷いてた。

聞こえないふりをしたほうがいいかも。

そう思って、私は空良先輩に、写真を撮りに行きましょう、と言った。

あの交差点に行きませんか、と。

曖昧に笑う空良先輩は、夕方になってからね、と言った。


結局今日。

空良先輩はデジカメを両手で持つことはあっても、構えることも、電源を入れることもなかった。

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