六月四日(日)曇りのち晴れ
バイト帰り。
夕暮れが綺麗だな、なんて思ってたら、
もちろん、いつもの場所で。
空良先輩は手に持ったカメラを覗くこともなく、ただじっと道路を見つめていた。
近くでは、公園で遊ぶ子供の声がしていて。
そのにぎやかさのせいなのか、なんだか、空良先輩だけぽつんを取り残されたみたい。
だから、おもわず声をかけてしまった。
どこか、危うい感じがしたから。
なんて声をかければいいのかわからなかったから、とりあえず、こんにちはって。
そしたら驚いた顔をしていた。
空良先輩は静かに笑って、こんにちはって返してくれた。
どうしたの、とも。
バイトだったことを伝えたら、お疲れさまって言ってくれた。
せっかくだから、いつもここでなにをしているのか訊いてみた。
空良先輩は曖昧に笑った。
なにをしてるんだろうね、なんて、私が訊きたいのに、そんなこと呟いて。
迷子なんですか?
なんて訊いてみたら、
そうなのかも。
なんて返ってきたから、先輩は迷子。
どこを探してるのか訊いてみたけど、先輩はまた曖昧に笑って首を横に振るだけだった。
それにしても、もう十七歳? 十八歳? で、しかも身長も百八十近くある男子高校生な空良先輩は、果たして迷『子』なんだろうか。なんちゃって。
……我ながらつまらないなあ。
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