六月十五日(木)晴れ☁

昨日渡しそびれたメモを、空良そら先輩に渡した。

それは、これからのやることリストで。


空良先輩に、デジカメの電源を入れてもらう!

空良先輩に、写真を撮ってもらう!

そしてそして、ツーショット、撮りませんか?


大きく分ければこの三つ。もう少しこまごまとしたことも書いたけれど、ざっくりと言えばこうなる。

上二つの今更感が半端ないけれど、文字にして見える形になるとまたいろいろと変わってくるかなって。

……最後のは、ほんのおふざけ、期待盛りだくさん。

自覚前だから好き勝手書いてる。昨日消そうか悩んだけど、でも、消さずに残してみた。ちょっと勇気。うん。

空良先輩は、苦笑しつつも、ありがとうって言ってくれた。


例の交差点に行ったとき。

空良先輩に、あの写真の女の子について訊いてみた。

……訊いちゃ、いけないことだった。

少なくとも、比較的軽い、興味本位では。


あの女の子の名前はあかねさんって言って、空良先輩と同い年で、本当だったら今頃、三年生になっていた人。

茜さんは、去年のこのくらいの時期に、亡くなっていた。


ちょうど、空良先輩があの写真を撮った、その次の日だったらしい。

すぐ近くで遊んでいた子供たちの一人が、車道に転がったボールを取りに行ってはねられかけたところを庇ったようで。

数日間生死の境を彷徨ったのち、息を引き取ってしまった。


淡々と話した空良先輩の横顔はとても静かで。

笑みは浮かべているのに、視線はどこか遠くて、儚げで。

触れれば消えてしまいそうだった。


もしかして空良先輩がこの場所にこだわるのは、茜さんを撮りたいからなんじゃないか。

それどころか、もしかして、空良先輩は……、なんて縁起でもないことを考えちゃって。

ごめんなさい。

そんなことも言えなくて。


私、先輩の新作、見たいです。きっと、茜さんも見たいと思ってますよ。


ただ、そう言うことしかできなかった。

空良先輩は静かに私を見て、微笑んでくれた。


ありがとう。

って。

皆そう言ってくれるんだけど、なかなか、ね。

って。


私、なに馬鹿なこと言ってるんだろう。

茜さんのことも、空良先輩のことも、知らないくせに。


無責任にも、程がある。

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