インド長距離バス事情

 引き続きトイレの話で申し訳ないのだが、少しだけおつきあいください。

 ロールティッシュが無くなったので、お尻を拭くのに、水を掌で掬って拭くことになった。最初は抵抗あったのだがこれが意外と悪くない。当時日本ではウォシュレットが出始めた頃でそんなに浸透はしていなかった。設置されていたのはデパートや新しいパチンコ屋くらいだったと思う。僕はウォシユレットを使用するとき、水圧を弱めで長時間当てるのが好きなので(赤裸々な性癖の告白、恥ずかしい♥)、掌でやるととてもソフトタッチになるので気持ちいい。これで汚れが取れるならいいではないか。インド習慣も侮れない。但しときおり洗面器ではなくコップが置いてあるトイレがあって、水量が少ないのでそれは厭だった。それにコップに入っているとなんとなく飲みたくなるから不思議だ。これは崖の上に立つとなんとなく落ちてみたくなる心境に似ている。


 さて次の目的地は砂漠の町ジャイサルメールである。僕のインド旅行を駆り立てた砂漠にやっと御対面できるのだ。

 観光局などでいろいろ調べると、インドでは鉄道同様に長距離バスも整備されていて町から町へと網のように路線があることを知る。値段も鉄道の5割から8割くらいで利用できる。失敗した。早く気付けばもっとバスを利用したのに。僕はジャイサルメールまでの道程を長距離バスで行くことにした。


 バスの大きさは日本の普通の路線バスと同じくらいである。定員は40人くらい。乗客の内大半はインド人であった。日本人旅行者は僕1人で、白人が5人くらい、ネパール人が5人くらいだったと思う。その中でも僕は道中の大半を、足を窓枠に投げ出して隣のインド人に寄っかかり口を開けて涎を垂らしながらぐーすか寝てた。我ながら図太い神経だと思う。


 朝の9時くらいであろうか、バスが止まった。どうやらトイレ休憩みたいだ。窓から外を見る。砂だ! やっほーい! 既に砂漠だぞ! 僕は乗客のみんなとともに外にでる。とても暑い。だが湿度がないのでそれほど不快でもない。ところどころに草が生えているが、ほとんどがさらさらとした薄黄色の砂だ。砂丘みたいに盛り上がっている。僕は幾人かと一緒に上まで登る。見渡す限りと思いきや、残念なことに一面の砂と呼べるほど範囲は広くない。僕は鳥取砂丘に行ったことがないけれど多分それくらいの広さしかない。でも落胆はしない。まだほんの入り口なんでしょ? わかります、わかります。ジャイサルメールに到着すれば本当の砂漠が待っているんでしょ。

僕は少し離れた処で小用を足してバスに戻る。バスはそこで30分くらい休憩した。


 結局ジャイサルメールに到着したのはお昼ごろで、12時間以上バスに揺られていた。 


※長距離なので、バスに乗る前は食べ物も水分も取らないようにした。それでも1度はピュルってしまったが、隣のインド人には秘密です。

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