アーグラ 1 タージマハールとスターウォーズとハシシ

 しつこいかもしれないが、この旅行記は25年も昔の話なので、僕の記憶もだいぶあやふやで心許無い。おそらく事実が7割・記憶違いが2割・意図的なフィクションが1割といったところで構成されている。そこのところをご理解して読んでいただきたい。


 駅からタージマハールまでリクシャーで行くことにする。デリーで経験値を高めた3人はインド人の狡賢さに対応する術を身につけてきた。頭の中では「チャララ ラッチャラー♪」とレベルアップの効果音が鳴り響いている。三人寄れば文殊の知恵とか三本の矢だとか縁起の良い言葉を思い浮かべて意気揚々とする。何よりワリカンにすれば安くなる。

 駅ではリクシャーの運転手が例のごとくどやどやと押し寄せてくる。ハウマッチと聞いて値段をはっきりと言わないやつは無視をする。ノープロブレムには飽き飽きだ。こちらからあまり熱心に営業活動していない運転手を見つけて交渉する。まずは想像する最低価格で「10ルピー OK?」と質問すると標準単価を下回るのか向うが首を振る。相手が納得する価格まで下から上げていく。そのようにして相互に満足する価格を見つけていくのだ。インドにおいて販売店で陳列されている商品や鉄道代金・入場料以外の物価は全て時価(というよりも人価だ。客によって100倍くらい差が出る。バブル時代の金満日本人にふっかけるのはある意味当然と言える)と言っていいだろう。結局タージマハールまで20ルピーくらいだったと記憶する。

 さて初リクシャーである。通常二人のところへ三人乗りこんでいるので狭くて乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。アーグラの町並みを眺めるとデリー以上に野良牛が目につく。


 15分ほど乗ってタージマハール到着である。玉ねぎ型の建物に、うーん、インドチックだなぁと感心する。タージマハールはその昔のマハラジャが奥さんのために建てた墓である。ここらへんは有名な話ですので割愛します。

 入場料が高かった覚えがある。たしか200ルピーくらいしたのではないか? 少し抵抗があったが折角なので入ることにする。(ネットで調べたら今は750ルピーだそうだ)

 入口から建物までは300メートルくらいあって、中心に5×200メートルくらいの池?があり、植木?が等間隔で並んでいる。

 本殿?は全て大理石である。さすがマハラジャだ。入口で靴を脱ぐ。何百足というシューズやサンダルが並んでいる。

 大理石だけあって建物内はひんやりとしている。ゆっくりと内部を閲覧しながら、遥か昔のマハラジャの気持ちを慮る。


 30分くらい建物内部を閲覧して外へ戻ると脱ぎ置いた僕のシューズが見当たらない。キャンバス地で甲の部分が大きくUの字に開きその部分を靴ひもがクロスするスリッポンタイプのシューズだ。高価ではないがとても気にいっていた。デリーでインド人から「それ、格好良いね」と褒められたこよもあった。いくらさがしても見つからない。とても残念だ。さて裸足で帰るわけにもいかないので、心の中で謝罪しつつ、サイズが合いそうなビーチサンダル(多くのインド人はおじさんサンダルやビーサンを履いている)を拝借する。


 建物の裏手に回るとここがほとんど崖の上に建っていることを知る。下は断崖絶壁とまでは言わないが、崖の下までは10メートルくらいありそうだ。下には幅広の河が流れている。対面にも土を剥き出しにした高台がある。今いる位置から崖沿いに500メートルくらい離れた処に茶色いアーグラ城が崖縁に佇んでいる。遠方は土むくれの荒れた土地だ。スターウォーズジェダイの帰還の序盤、R2D2とC3POがジャバの宮殿を訪れるシーンの、とぼとぼと二人のドロイドが歩く遥か先にジャバの宮殿が鎮座するカットを思い出す。(描写が下手くそでごめんなさい)そこからの眺望は今でも目に焼き付いているほど美しい景色であった。タージマハール自体は外から眺めれば十分だが、この情景を見ることが出来たので、高い入場料を払う価値はあった。


 敷地の外にでるとまたしてもリクシャー軍団に囲まれる。アーグラ城までは歩いていける距離なので断ると、一人のインド人が「いいもの、ありまっせ」と近づいてくる。耳を傾けるとハシシがあるという。ハシシと言えば「限りなく透明に近いブルー」でリュウたちがドアーズを聞きながらキメるあれではないか。人生の深淵を覗く旅人としては避けることができない。厚さ5mmほどでコイン型をしたハシシを二つ、100ルピーで購入する。ハシシは色がこげ茶色をしているので別名チョコとも呼ばれる。ガンジャの方が手軽で良いのだがそのうち入手する機会はあるだろう。


※ガンジャ(マリファナのことです)は大麻草を乾燥させたものでハシシ(チャラスとも呼ばれる)は大麻樹脂であるが成分的には同じものである。パイプを持っていなかったので煙草にまぶしてキメていた。方法がまずかったのかそれほどハイになることはできなかった。


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