アーグラ 2 アーグラ城/キャッツアイ、インド象に乗る
アーグラ城までの道程に記憶はない。遠目に見た土色をした城はファンタジックだったが近づくにつれて原始的な要塞という雰囲気を醸し出してきた。アーグラ城の内部はこれといって言及するようなところもない。ディズニーランドのアトラクションで乗り物に乗るまでに見せられる舞台のような印象を受ける。人工的というのではなく、見世物としての存在期間が建築物の威厳を風化させているのだろう。
アーグラ城からの帰りはまたリクシャーを利用する。運転手から面白いところ連れてってあげようかと言われる。さて既にレベルアップを果たしている3人組である。もうインド人のいいように翻弄されたりはしない。しかも3人で心強くしている。OK。いいじゃない。連れて行って貰おうじゃないの。言っておくけど俺達は手強いぜ。
鈴木は厭そうな顔をしていたが大丈夫だよと諭す。
リクシャーはアーグラの町並みを抜けて、スラム街ぽいところまで入っていく。徐々に3人は無口になっていく。みんな会話することなく目を左右に揺らして、背の低い屋根だけの掘立小屋(朽ち果てた海の家という印象。多くの汚いインド人が雑魚寝しているのが見えた)を見いっている。そこを縫うようリクシャーは進み、周りよりかは2段階ほど造りがましな小屋の前で降ろされる。鈴木と木村は青い顔をして顔を引きつらせている。中に入ると質屋みたいな造りになっていて、いくつか木箱があり宝石が陳列されていた。
普通の販売店ではないが正直安堵した。店ならば何かを売りつけようとしているだけだろう。拉致や誘拐まで想像してしまったがそこまでの最悪な状況ではないみたいだ。
店主?が出てきて商売をしようと持ちかけてくる。小売が目的ではなくアーグラの宝石を安価で仕入れ日本で売れば儲かるぞと説明している。石の鑑定などできないし商売できるほど持ち合わせはないと伝えるがそれなら買えるだけ買って日本で儲けてからまた来いとけしかけてくる。さすがに話が大きすぎる。ぼったくるのが目的でなく本当に商売相手を探しているのだとしても、耳を貸す気になれない。3人で頑なに拒否をすると店主は諦めたのか数点でいいから買えと半ば脅してきた。店内には店側の人間が3人いた。こちらも3人だがアウェイの不利はいかんともしがたく、渋々100ルピーだして小さなキャッツアイを2個購入した。他の二人も別の小さな石ころを購入していた。
レベルアップした者にはそれなりの強敵が現れる。さすがはインド、侮り難しである。
五体満足で中心地に戻った3人は安堵感でいっぱいだった。二人から僕のせいだと責められた。ここからほどない所で象に乗れるツアーがあると知りその代金で許してもらうことにする。
バスのターミナルみたいなところにインド象と象使いが10セットほどたむろしている。象はスカトロマニアが喜ぶほどバンバン脱糞している。糞をまたいで料金所まで歩く。象の上には木製の籠が取り付けてあり、その上に乗るらしい。運賃は20ルピーくらいだったかな。
象使いは唄を歌いながら象をコントロールしている。30分ほど象さんの背に揺られ、クルージングを楽しむ。
地球上で最強の動物は何か? 虎?ライオン?樋熊?北極熊?カバ?鰐?コモドドラゴン? まあアフリカ象という答えが大勢的だろう。その象(インド象だけど)の上に乗ってる俺ってさらに最強なんじゃね?と先程の出来事も忘れて僕はまたしても気が大きくなった。
※今思うとあの店は窃盗団のアジトだったのではないかと思う。場所的に販売店というのはありえないし、やつらが宝石の卸業者であの店が折衝場所だとするのも無理がある。
※後日、下北沢の石屋さんで同じような小さなキャッツアイが1個100円で売っているのを見つけた。
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