【アマリリス】
――『会わぬ愛背中合わせのアマリリス』
【ひとこと】
アマリリスを見かけた。
シャキっと伸びた太い茎の頂点に大きな花が2つ。お互いが示し合わせたかのように右と左を向いていた。アマリリスは仲夏の季語らしい。
コロナ騒動で外出を控えている今、会いたくても会えないカップルも多い。
イギリスでは、とある記者会見で国内のカップルに対し「絆の強さを試すべきだ」と呼びかけた記事が載った。同居していないカップルが、会うことでウイルスを持ち帰ることになり、お互いの家族に感染を広げる可能性がある。それは絶対に避けなければならない、というのが政府のメッセージだ。これを受けて「頑張ろう」と励まし合ったカップルは、イギリスだけでなく世界各地にいただろう。
このような状況でなかったら、見かけたアマリリスに対して別の感情を抱いていたかもしれない。喧嘩して互いの顔も見たくないカップルに見えていたとか……愛宕の捻くれた発想では、コチラの解釈になる傾向が強い。一本の茎から咲くアマリリスの花が、いつの日か向き合うなんてことはないのだから。だが、今回は頑張って耐えているカップルとアマリリスの背中合わせが重なった。念ずれば通ず……。
そのアマリリスに少しだけ近づいてみた。
よく見ると、茎の中には3つめの小さな蕾が隠れていた――。
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