【連歌】
【問いの片歌】
①晴れた日の買い物メモに単三電池
②コーヒーか紅茶それとも海を見にゆく?
③歩きだす洗いざらしのブルージーンズ
④風の色記憶の中のあなたとあなた
⑤まっすぐにまっすぐに降る雨を見ている
連歌という形式の和歌がある。
一人が上の句を詠み、それに合わせて別の者が下の句を詠む。和歌による韻律(上の句が五七五、下の句が七七)が基盤で、その起源は平安時代と古く鎌倉時代から南北朝時代のあたりに大いなる盛り上がりを見せたと言われている。まぁ、ちょっとした言葉遊びだ。
山梨県の酒折という地域では、連歌発祥の地を謳って毎年『酒折連歌賞』という催しをしている。多くの人に連歌というものを知ってもらい、興味と創作意欲を持ってもらおうというのが趣旨だ。愛宕も遅ればせながら、昨年にその存在を知り公募してみた。
酒折連歌賞の連歌は独自のスタイルを持っており、片歌問答の基本となる音数が上の句「五七五」に対し下の句も「五七五」で返す形式となっている。上記に挙げた五つの片歌が今回のお題だった。公募では全ての片歌を返す必要はなかったのだが、愛宕は律儀に全部の問いに答えてみた(笑)
①【問:晴れた日の買い物メモに単三電池】
【答:台風のハザードマップ下見しながら】
昨年は台風の影響が色濃く残った年だった。ちょうど被害に遭った地域のニュースを多く耳にしていた時でもあったので「単三電池=防災アイテム」というイメージで答えたものである。晴れた日に徒歩で買い物へ行く。買うものは決まっていたので、防災のイメージを繋げたところにスマホの登場。この辺りのハザードマップはどんな感じなのかチェックしながら遠回りなんかもしてみる。そんな感じ。
②【問:コーヒーか紅茶それとも海を見にゆく?】
【答:今はもう東インドの船は無くとも】
コーヒにするか紅茶にするか……それとも海? 愛宕はコーヒー派だ。違いがわかる男のテーマソングを脳裏に流しながら海を眺めるのも一興。そんなイメージで答えを出そうとも思ったが、ここは一捻りして「ボストン茶会事件」を取り上げてみた。この歴史的事件をざっくばらんに言うと、十七世紀にヨーロッパ各国がアメリカへ進出した時代、コーヒー貿易の競争に負けたイギリスが紅茶貿易に力を入れて重い税金をかけた結果、アメリカの人々が怒ってイギリスの東インド会社の船を襲い、積み込んであった紅茶を全て海に放り捨てたというもの。その歴史を冗談めかして「海を見に行ってもいいけど、もう東インド会社は無いねぇ」といった感じで答えてみたものだ。捻り過ぎだったかもしれない(笑)
③【問:歩きだす洗いざらしのブルージーンズ】
【答:長々と籠った我が身も日に晒して】
何度も洗って色が褪せたジーンズ。それが歩き出した。「再び」という言葉は入ってないが「歩き出す」という言葉に久々感を抱いた。長く愛用していたジーンズもはかずに家に引き籠っていた自分。そんなことではダメだと気持ちを改めて久しぶりに我が身も日に晒してみた。昔の愛宕にはこんな時期があった。我が身もジーンズも日光を浴びてカビ臭さを取るようなイメージ(笑)
④【問:風の色記憶の中のあなたとあなた】
【答:君は海お前は山が好きだったよな】
風に乗って入り込んできた記憶の中には「あなた」と「あなた」が見えている。長い人生、記憶に残るような異性は二人くらい……それ以上はいてもおかしくない。愛宕の記憶に二人の女性が浮かび上がった。君と行った海。あいつと登った山。彼女たちの温もりはどちらも風と共に去りぬ……想い出だけは残りつつも。そんな感じ。
⑤【問:まっすぐにまっすぐに降る雨を見ている】
【答:あちこちと迷った人生振り返りながら】
本当は右斜めに左斜めにと乱れるような様子で降り落ちているのだろうが、脳裏に浮かんでくるのは一糸乱れぬ様で上から下にまっすぐと降り落ちている雨。そんな雨を眺めながら「あぁ、自分の人生も迷うことなく、乱れることなく過ごしたかった」と後悔の念が浮かぶ。そんな人生なんて無いけれど「ああすれば良かった。こうすれば人生変わっていた」という気持ちは誰しもあるのではないかなと思う。上手く言えないけれど、この問答には対比のイメージをなんとなく出してみたかった。
どれも選考に引っかかることはなかったが、こういった問答形式で句を捻りだすのも面白いなと感じた公募である。「興味と創作意欲を持ってもらいたい」という主催者の想いにピタリとハマった。次回も楽しんでみたいと思う (-ω☆)キラーン!
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