【光】

 ――『梓弓いればたちまち光被して 末に広がる新たな時代』



【ひとこと】

 先日(一月十六日)、皇居・宮殿「松の間」で新年恒例の宮中行事「歌会始の儀」が行われた。平成最後となる今年のお題は『光』で、天皇、皇后両陛下や皇太子さまら皇族方のほか、天皇陛下から招かれた召人、選者、入選者の歌が、古式にのっとった独特の節回しで披露された。


 平成最後の歌開始ということで、一般応募で集まった句も二万首を越えたと言われている。愛宕もさり気なく応募していた。応募には半紙に毛筆、お題の『光』を句のどこかに入れて詠まなければならない。ものすごい久しぶりの半紙と毛筆に戸惑ったが、何枚も書き直してどうにか完成に漕ぎつけた。


 どうしても『梓弓』という言葉を入れたかった。皇太子徳仁親王(浩宮さま)の御印が『梓』だからだ。梓弓は神事などに使用される梓の木で作られた弓のことを言うが、和歌では枕詞として使われている。梓弓のあとには「射る」「張る」「引く」「末(すえ)」などの言葉がかかる。


 お題には『光被』という言葉を使ってみた。光が広く行きわたること。または、君徳などが広く世の中に行きわたることを意味する。


 これらを織り交ぜて詠んだ句には、新たに即位する皇太子さまへの応援というかエールというか、そういった想いが込められている。弓を射れば、その軌道が光を帯びて前面に広がり、どこまでもどこまでも続いていく。平成が終わり新しい時代となっても、末まで平和の光を照らし続けて欲しい……そんな感じ。愛宕風情が「何を言っておるか」と言われそうだが、ともかく日本の象徴として伝統を受け継ぎ、新しいものをどんどん吸収して次世代へと続く光の道を照らして欲しいと願っている。


 選ばれることはなかったが、昨年の数ある公募投句の中で、愛宕なりに一番真剣に取り組んで捻りだした一句だ。言い換えれば「捻り過ぎ」て小難しいイメージが否めない(笑)


 次は、もっと肩の力を抜いて考えてみよう――。



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