【電車】

 ――『春寒し通過電車を待つ車内』



【ひとこと】

 各駅停車が駅で通過電車を待つひととき。

 ドアが開け放されたままで、ちょっと寒い様子を句にしてみたものだ。


 季語は『春寒し』。

 立春を過ぎ、3月上旬までの頃に感じる寒さのことを表している。これと似たような季語で『余寒』というのがあるが、どちらも意味は「寒さが居残っている」というイメージで使われている。しかし、そのニュアンスの差は大きい。


 ――『余寒』は、ただ寒さが残っているというイメージ。

 ――『春寒』は、寒いけれど「春なのだ!」という春への思いが強いイメージ。


 春というものに対して、より貪欲に求めたものが『春寒』という言葉である。


 句のイメージとしては、単に「通過電車を待ってる間は寒いものだなぁ」という気持ちを綴った平凡なものだが、それでも「春なんだ。春は近い」と言い聞かせて、冬の寒さとは違った感覚を得るような想いを上五の『春寒し』に込めてみた。



 この句は『交通総合文化展2018』に投句したもの。テーマは「日本の鉄道に関するもの、日本の良さを表現したもの」となっていたので、愛宕は鉄道関連で通勤電車の一風景を切り取ってみた。選ばれることはなかったけれども、入選した句をそれぞれ見てみると『夏』をイメージした句が多かったことに気付いた。募集の締め切りが7/31で、発表が9月だったことを考えると……寒いイメージは場違いだったかもしれない (^_^;)



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