【駅・ことば・忘れ物】

 ――『会いたくて 偶然を装う 駅の改札』

 ――『着いたよと 声掛けてもらう 狸寝入り』

 ――『網棚に 忘れたフリの バレンタインチョコ』



【ひとこと】

 電車と青春21文字プロジェクトというのがある。

 滋賀県の琵琶湖を沿って走る京阪電車石坂線。その全21駅の内には数多くの学校が並び立ち、正に『青春』という言葉が似合う路線。そこで、若者たちを中心に恋心あふれるような21文字の言葉を集め、その中から『歌人 俵 万智さん』が素敵な句をピックアップするという企画。

 昨年の募集で11回目を迎え、その応募数は第一回目の2,355通から倍の4,999通まで増えているところに、その人気のほどがうかがえよう。


 愛宕も、昨年の募集で初めて知り投句してみた。

 俳句のように「五・七・五」に拘る事はなく、21文字以内なら自由に表現して良いというのが面白くもあり、逆に難解とも受け取れるかもしれない。そして、テーマもある。今回は【駅・ことば・忘れ物】。一人三句まで投稿可能という事で、それぞれのテーマに沿って投句してみた。



 まず一つ目。テーマは【駅】

 ――『会いたくて 偶然を装う 駅の改札』



 あぁ……これを先に言っておかねばならない。

 あくまでもという事である。若者でない愛宕にも参加資格はある。ついでに言えば、愛宕がものである。


 改札は待ち合わせにピッタリの場所だ。特に学生は電車がメインの移動手段。高校の頃は、自分の地元以外からも多くの高校生……そして色とりどりの学生服が各駅の中で入り混じる。

 一目惚れをした女の子は、同じ駅を利用している事がわかった。話しかけるほどの勇気は無い。でも、何か話しかけるきっかけは欲しい。ならば、まずは自分の存在を知ってもらおう。毎日のように通っていれば、彼女の行動パターンも読めてくる。同じ時間、同じ改札に自分も存在していれば、いつかは「いつも一緒ですね」と話せるきっかけがつかめるかもしれない。そんな気持ちを詠んだ一句である。偶然を装った結果どうなったか……ここは、それを語る場では無い(笑)



 そして二つ目。テーマは【ことば】

 ――『着いたよと 声掛けてもらう 狸寝入り』



 愛宕の利用する電車にもあるが、京阪電車石坂線にも「向かい合わせの席」が配置された車両がある。そこに座って、自分の降りる駅まで寝ていたとしよう。ここは既にカップルが成立している設定で愛宕は詠んでいる。好きな人が隣に……ずっと話しているのも恋人らしくて良いものだが、時にはそっと肩でも借りて寝てみたくもなる時があるのではないかな?

 好きな人の優しい一言が欲しくて寝たフリをする……そして「ほら、着いたよ」と肩を揺すられて起こされる。あぁ、気にかけてくれてるなぁ……なんて心が浮き立つような事はなかっただろうか(愛宕はある!)。そんな気持ちを詠んだ一句である。



 ラストに三つ目。テーマは【忘れ物】

 ――『網棚に 忘れたフリの バレンタインチョコ』



 これは、時期的なものを狙ってしまった。発表が二月という事で、バレンタインに因んでみた。ついでに言えば、詠みなおして改めて「自分は何を詠んでいるのだろうか」と反省した。この句は、過去の愛宕とは関係なく妄想だけで詠んでみたものである。対象者を「車掌さん」にしてみたというゴーイングマイウェイ(笑)

 網棚に置きっぱなしにしておけば、憧れの車掌さんに見てもらえる。そして、それが車掌さんへ贈られたものだと気付く(車掌さんへの手紙付き)。車掌さんの乗る時間をきっちりと調べた上での行動……あり得ないよね。 il||li. _| ̄|○il||li

 これを投句した当初、愛宕はどんな心境だったんだろうと謎ばかりが残る一句だ。



 この三句で応募したら奇跡が起きた!

 二つ目の『着いたよと 声掛けてもらう 狸寝入り』が、なんと『入選百選』に選ばれた。応募時の雅号はもちろん「愛宕平九郎」である。だいぶ嬉しい☆

 そして、百選に選ばれた句は『歌人 俵 万智さん』も目を通して、その中から優秀な句をいくつか選ぶ段取りとなっていた。愛宕の句は、そこまで選ばれる事はなかったが『俵 万智さん』が愛宕の句に目を通したのか!? と想像するだけで感激の至りである。




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