第48話

 金切り声のようなハイコードを理子は怒涛どとうのカッティングテクニックで削り出す。

 それに合わせて善太がバスドラをどん、どん、どん、どんと四つ打ちで踏み始める。そのリズムに乗ったおれは、神様たちに向かって両手を頭の上でパンパンと叩き始める。

 すぐに神様たちは俺と同じく頭の上で手を叩き始めた。数千柱はいると思われる神様たちが一斉に手を叩く姿は壮観だった。みずらが揺れる。ひらひらとした袖口があちらこちらで花開き、その白い布の色と相まって波しぶきが立っているようだ。

 ギターとドラムの絡みに合わせておれはドウーン、ドウーンとEの開放弦を叩きつける。

 「激昂擊男、いきまーす!」

 おれがそう叫ぶと同時に善太は激しいスネアロールを放ち、おれと理子は同時にグリッサンドで音をグウイーンと上げにかかる。


 ―ゲッコウゲキオ!

 ダダッダダンダンダダッダダンダン!

 ―ゲッコウゲキオ!

 ダダッダダンダン!

 ―ゲッコウ!

 ダダッダ!

 ―ゲキオ!

 ダダッダ!

 ―ゲッコウゲキオ!

 ダダッダダンダン!

 

「激昂擊男」はギルモアヘッドのレパートリーの中でも最も激しく、一番盛り上がる曲だ。誰にも秘密だが、この曲はおれが高校3年生の時につきあっていたトモミちゃんが後輩に取られた時に泣きながら作ったものだ。そのどうにもならない気持ちや憤りををすべてぶち込んだので、暗い情熱に溢れた破壊力のある曲に仕上がった。

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