第46話

 

 外に出たとたん、熱狂的な大歓声でおれたちは迎えられた。最初の時とは大違いだ。まさかこんなに受け入れられるとはおれは思ってもみなかったので逆に引いてしまった。

 しかしオトタチが高く手をあげ、すぐに斜め下に下げる動作をすると神々は突然しいんとなった。オトタチはいつの間にかマイクを手にしていた。オトタチの声がクロとシロの口を通して力強く響く。

 「道速振ちはやふ八百萬やおよろずの神、歓喜よろこべ。れらギルモアヘッドのとよみを得たり。響みを聞く吾れらが心いたく猛々たけだけし。かれ、戦ひな恐れそ。恐るるものぞなき。たけく強き音聴きつつ力をつくして戦へ。弓引け。つる鳴らせ。八岐大蛇切りほふりし速須佐之男がごと御佩はかせる十拳剣とつかのつるぎけ。道速振る荒ぶるまがつ神を神逐かむやらひらふべし。いな、大石砕くがごと撃つべし。禍津久留刀布擊ちてし止まむ!」

 ―禍津久留刀布撃ちてし止まむ!

 「撃ちてし止まむ!」

 ―撃ちてし止まむ!

 オトタチの見事なアジテーションで神々の戦意は一気に高まり、どおんどおんどおんという地響きのような足踏みがおれ達のいる倉庫を揺らした。なんだかえらいことになっている。

 「ささ、タケオ君、あいさつして」

 気圧され気味のおれにオトタチは容赦なくマイクを渡してきた。神々は再び静寂を取り戻し、おれに注目している。いよいよおれは後に引けなくなってしまった。

 「あ、こ、こんちは。大山武雄です。が、がんばります」

 とたんに神々は、おぉオー!と雄叫びを上げ間髪いれずに

 ―タケヲ!タケヲ!

とコールし、足踏みを始めた。

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