第45話

 しかし、今回はいきなり初めての楽器で合わせたにもかかわらず、異常なまでの高揚感を得たんだ。それは理子も善太も同感のようだ。

「なんかすごかったね!お兄ちゃん!こんなにヤバい感じ、今までなかったんじゃない?」 

 理子は額から流れる汗を拭きながら言った。

「オレTシャツ脱ぐわ。ねえ、理子ちゃん、タケちゃん、このドラム、すごいよ。こんなにタムとかシンバルがあるのに、ちゃんといつどれを叩いていいのか、自然とわかるんだよね。オレ、プロでもやれる気がするよ」

 善太はそういって上半身裸になった。そして最後にオトタチが興奮した様子で、手を叩きながらおれ達を賞賛する。

「みんな、凄かったよ!思った以上にパワフルで心に響いたよ。これならきっと神様たちも喜ぶよ。だって、ほら、聞こえるでしょう」

 そう言われてみると、なにやら外がざわついている。おれと理子は窓の外を見た。

 それと同時に、おれたちはわあと驚きの声を出した。窓の外にはたくさんの神様たちが集まりこちらを伺うように見ていたからだ。そしておれと理子が顔を出したとたん、おおお!というどよめきが起こった。神様たちは口々に何かを言っている。

 ―ぎるもあへど、あやにうた楽し

 ―あれ、未だかかる響む音を聴かざりき

 ―いたく畏き音なりき

 ―なほぎるもあへどが音ゆかし

 なんだかよくわからないが、評判は上々のようだ。

 オトタチはおれたちに向かって

 「ねえ、みんなにあいさつしなきゃ。きちんと顔合わせしておいたほうがいいもんね。一旦外に出ようよ」

 と言い口笛をヒュウと吹いてクロとシロを立ち上がらせた。

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