第36話
「うん、まずはリハーサル室で楽器を渡すわ。リハ室っていっても、ただの大きな倉庫なんだけど。楽器はタケオ君たちのマイ楽器じゃなくて、高天原で作られた楽器があるんだ。この国の材料で作られたギターとベースとドラムがね。あとは、特性のアンプがある・・・ううん、いるんだけど、ちょっとビックリするかもね」
「ビックリってどういうこと?あと、いるって・・・」
とはいえ、こちらの常識では計り知れないことばかりのことが続いているのでおれはもうちょっとやそっとでは驚かないぞと思いながらオトタチに聞いた。
「へっへー、秘密でーす。すぐ会えるよ。実際にタケオ君たちの目で確かめて。あのつきあたりの建物だよ」
おれたちは一直線に続く屋根のある長い渡り廊下を歩いていた。地上1メートルはあるその廊下は、歩くたびに床の木がギシギシいうが、木の香りがあたりに漂ってなんとなく心が休まる気がする。そしてそのどんつきには、一軒家ほどもあるだろうか、大きな高床式倉庫が見えた。
倉庫の入口は横木を組み合わせた両開きの引き戸で閉ざされていた。オトタチはその前でくるりとおれたちに向かって振り向いた。
「じゃあ、開けるよ。さーて何が出るかなァー!」
オトタチはおれたちが演奏を引き受けて以来、妙にテンションが高い。彼女なりに重い責任を感じていたのだろう。今では表情もかなり晴れやかだ。おれはオトタチの新しい面を見てさらに彼女のことが好きになってしまった。
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