第35話

 オトムシメがやって来て食事を下げると、入れ替わりでオトタチがやってきた。

 しかし彼女はサマーセーターの代わりに、赤い着物のような上衣と青いスカート、いや、裳というのか、とにかく例の高松塚古墳の出で立ちで現れたのだ。首には翡翠ひすい勾玉まがたまの首飾り、そしてロングヘアはきちんとまげで整えられている。どこでどうなっているのかよくわからないけれど、さらにはヒラヒラの青い羽衣をまとっていた。その美しさには神々しささえ漂っていた。まあ、神様なんだから当然といえば当然なのだろうが。

「わーオトタチさん、きれーい!」

 理子はおれが思ったそのままを口に出した。

「えへへ、ありがと。これが私の普段着なんだよね。でも実際、中つ国の洋服の方が楽だよねー。でもここであのカッコしてたら色々とうるさいのよ。まあ、そのうちみんなにもこっちの格好してもらうようになるけどヨロシクね。あれ、タケオ君、何か具合悪そうだけど・・・」

「あ、いや、大丈夫。ちょっと疲れてね・・・いきなり色んなことがあったし」

 おれは目で理子にオオゲツビメのことは言うなと伝えて言った。

「そうだよね、大変だったよね。本当にゴメンネ。でも、これからみんなにはもっと大変なことをしてもらわなくちゃならないんだ・・・まずは色々と準備があるの。ついてきて」

 おれたちはオトタチのあとについて廊下を歩き出した。

「これからおれたちどうすればいいの?」

 おれは他にも訊きたいことが山ほどあったが、とりあえず今この状況がどうなるかを知っておきたかった。

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