第34話
やっとのことで元の部屋にたどり着いたおれは相当ひどい顔をしていたに違いない。
タケミカヅチはいなかった。なにやら彼も大事な用があると言って席を立ったとのことだ。善太は相変わらず神様の料理をばくばくと食い続けている。おれが迷いに迷ってようやくここに辿り着くあいだに、さきほどの大皿料理とおひつもそこに置かれていた。こみ上げる吐き気をこらえながら、おれは善太には黙っておこうと思った。
「どうしたの、お兄ちゃん。顔色悪いよ」
おれは理子がダイエットなどといって食事を取らなかった理由をようやく理解した。
「理子、お前、オオゲツビメのこと知ってただろ」
おれは善太に聞こえないように理子に耳打ちした。
「えっ、なんで・・・あっ・・・ひょっとしてお兄ちゃん・・・?」
おれは力なくうなずいた。
「やっぱりそうだったんだ・・・。スサノオノミコトが高天の原から追放される時に、オオゲツビメはご馳走でもてなすんだけど、その方法が・・・」
「知ってる。だって見たから。だからお前食わなかったんだな」
理子は善太をはばかりながら小声で言った。
「教えようと思ったんだけど、タケミカヅチさんがいたし・・・どうしようもなくて。善ちゃんには言わないほうがいいよね」
相変わらず一心不乱にメシを食っている善太に真実を伝える気にはなれない。
俺は仕方なく、残りの白米だけをおかず無しで、無理やり食うことにした。
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