第15話
おれはなぜオトタチが真剣な顔で冗談を言っているのかわからなかった。
「いやいやそうじゃなくてさ、ホントはどこなの」
「ホントに本当に高天の原よ。みんな、今から私が言うことは全部本当のことだと思って。まずはみんなに謝らなきゃならない。ごめんなさい」
おれたちはポカンとして何も言えなかった。なぜオトタチが急に謝るのだろう。
「ごめんって、なんで・・・え、やっぱりツアーなんて嘘だってこと?」
おれは足の下からなにか冷たいものがじわじわと湧き上がってくるような感覚に包まれた。
「ううん。ツアーは本当。タケオ君たちにはきちんと演奏してもらうわ。ただ、その目的は別のところにあるってことなの」
「別のところって?」
理子がおれとオトタチの座席の間に身を乗り出して聞いた。
「何から話せばいいのかな・・・にわかには信じてもらえないだろうけど、さっきも言ったとおり、ここは高天の原なの。言ってみれば理子ちゃんの住んでいるところとは違う国なの。実はここでかなり厄介なことが起こっていて、その解決の頼みの綱がギルモアヘッドなの」
相変わらずさっぱり何のことかわからない。オトタチはどういうつもりなんだろう。
「高天の原っていうことは・・・神様の国ってことなんですか?」
理子は自分で言っていることがとんでもないことだとわかっているのだろうか。
「そうなの。そのとおりなの。あなたたちは文字通り神様の国に今いるってこと。すぐには信じてもらえないだろうけど、いずれ解るわ」
オトタチはタチの悪い冗談を言っているに違いない。
「じゃ、じゃあオトタチが神様だって言ったのは・・・」
「そうよ。本当よ。私も神様の一人。そうは見えないだろうけど。とりあえずこれからいうことをよく聞いて。さっきも言ったとおり、この国では、ううん、この国々で今大変なことが起こり始めているの」
「国々って?」
すっかり顔を出した朝日を浴びて光り輝いている前方の青々とした草原を見つめながらおれは聞いた。
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