第14話

 ゴタゴタというあまり経験したことのない振動でおれは目を覚ました。外はうっすらと明らんでいた。運転席を見るとオトタチが真剣な顔をして前方をみていた。

「おはよう。よく寝たね。もうすぐつくよ」

 ぼんやりしたまま窓の外を見ると、とうに高速を降りたらしく、走っている道は舗装されていない砂利道だった。砂利道?

 そう、その砂利道は朝日を浴びてくっきりと青さを際立たせて高々とそびえ立つ前方の山に向かって一直線に伸びていた。それ以外は見渡す限りの草原だ。左右を見回すと同じように紫とも青とも形容できる高き山脈がそびえ立ち、この草原をぐるっと取り囲んでいた。おれは映画によく出てくるアメリカの田舎道を走っている錯覚を覚えた。山の中とは聞いていたが、これはどうしたことだろう。

 同時に理子と善太も目を覚ました。

 「なんだか随分寝ちゃったような気がするけど・・・あれ?ここどこ?もう着いたの?」

 理子が半目で聞く。理子はおもむろにスマホを出して画面をタッチした。

 「あれ?つながらない?圏外ってこと?今時圏外なんてあるの?」

 「俺のもだよ理子ちゃん。ウンともスンともいわないよ」

 後ろの二人の話を聞いて、オレもスマホを見てみたがやはり何処にもつながらない。そんな山の中に来たのだろうか。しかし山の中にしては様子が変だ。けっこうな平野のようにも見える。こんな場所が日本にあるのが何か不思議だった。

 「オトタチ、ここどこなの」

 妙な不安に包まれたおれは思わず聞いた。

 オトタチは前方をきっと見つめながら数秒間黙っていたが、ようやく口を開いた。

 「高天の原よ」

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