第13話
俺の隣の助手席ではオトタチが次の運転に備えて仮眠をとっていた。ちらちらとおれはその寝顔を盗み見することで、慣れない高速運転のつれづれを紛らそうとした。後部座席では理子と善太が眠っている。
――オトタチも神様だったりして
――そうだよ
ふとさっきの会話が脳裏によみがえる。あのあとオトタチが少しでも微笑んで「うっそー」とでも言ってくれていればこんなふうに思わなかったかもしれない。
花園神社。お守り。天の御柱芸能社。そして部屋にあった立派な神棚。高天の原。そのほかもろもろの事柄が何かひとつの点に向かって集まり始めているような気がしてきた。いやいや、そんな馬鹿な。偶然の一致でしょう。
俺たちはこれから地方の野外フェスに出演し、ギルモアヘッドとしての存在をアピールするのだ。うまくやれば評判になって、CDを出してまたオトタチとツアーに出て・・・その先はどうなるのだろう。まあ、考えて仕方がない、とにかくライヴを全力でこなすのみだ。
「ふわあ、今何時?今どの辺まで来た?四日市?あらそう、タケオ君疲れたでしょう。次のサービスエリアでまた代わるね。ありがとね」
「なんだ、まだ寝ててもいいのに。まだおれ運転できるよ。神様だって寝るんだろ」
「うん。そう。でももう平気。タケオ君、高速降りたら道がわからないでしょ。それにタケオ君こそ寝たほうがいいよ。明日はきっと想像以上に大変だから」
想像以上ってどういうことなんだろう、と思いつつ、さすがに慣れない高速運転と眠気とでおれも実はクタクタだったのだ。
オトタチに運転を代わってもらうと、すぐにおれはぬるい泥沼の中に引きずられるように眠りについた。
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