第16話

 「高天の原、海原の国、根の堅州かたす国、そして黄泉よみの国のこと。これらは神話の話だけでなく、存在するの。もちろん、みんなの住む葦原の中つ国とはふだんは断絶しているからその存在は古事記の中の架空の国だけど。でも数千年前まではまだつながっていたのよ。うつしき青人草あおひとくさが・・・人間が独自の営みをできるようになってから行き来は閉ざされたの。こちらからは行けるけど、そちらからは来られない、そういう構造なの。そうやって何世紀にもわたって神様と人間はお互い干渉せずに過ごしてきた。もちろん、神社やお祭りを通して交流はあるんだけど、決して人の側からは行き来はできないの」

 おれたちはまだ半信半疑で話を聞いていた。あまりにも荒唐無稽すぎて信じろという方が無理だ。

 「ところが最近異変が起こり始めたの。原因はどうやら黄泉の国にあるらしいんだけど、はっきりはまだわからない。異変っていうのはそれまで現れたことのない荒ぶる神がそれぞれの国で暴れだしたのね」

 「荒ぶる神って?暴れるってどういうこと?」

 理子が顔を曇らせてオトタチに聞いた。

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