第10話

 「タケオ君、梨は投げないけど、大体そのとおりよ。そうして最後は千引ちびきの石っていう千人でやっと動かせるほどの大きな岩で黄泉よみの国と葦原の中つ国との間をふさいだの」

 梨は余計だっだか。でもなんとか話に参加できて嬉しい。善太も黙ってスナックを食いながら、話を聞いているようだ。オトタチは後を続ける。

 「葦原の中つ国に戻ったイザナキはけがれはらうために泉でみそぎをするの。その時にたくさんの神様が生まれたの。特に有名なのは左目を洗って生まれたアマテラスオホミカミと右目を洗って生まれたツクヨミノミコト、そして最後に鼻を洗って生まれたスサノヲノミコトね。三貴子ってよばれてるの」

 それにしてもなんでこんな話になっているんだろう。別に嫌いじゃないが、なぜオトタチはこんなに古事記に詳しいんだ。

 「それを喜んだイザナキはそれぞれ国の統治を命じるの。アマテラス様・・・アマテラスには高天の原を、ツクヨミノミコトには夜の食国おすくに。スサノオには海原わたつみの国ね」

 全然知らない。ツクヨミノなんとかに至っては初めて聞いた。さすがにアマテラスとスサノオは聞いたことがあるが・・・。

 「まあ、キリがないからこのへんにしておくけど、アマテラスオホミカミの統治する国が高天の原なのね。で、さっきの理子ちゃんの話なんだけど、御所市は昔『葛城』って呼ばれていて、高天の原とつながありがあるか、もしくは場所そのものだって言われてるの。それで『神々の降る里』なんてキャッチコピーがついてるのよ」

 「ふうん。でもさ、そんな神聖なところでさ、バンドの演奏なんかやるとこあるの?ていうかやっていいの?」

 おれはさっきオトタチがいった『特別な場所』っていう言葉が引っかかっていた。

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